着物雑学帖 その10 兎について
- 投稿日:2021.09.15
- カテゴリ: 着物雑学帖
こんにちは!コモノハナの高山です。
さてさて、今日は9月15日
毎月15日は…
着物雑学帖の日です!
この表題を描いていて気が付いたんですが、
今回はなんと、記念すべき10回目!!
第一回目からずっと、お題に文章にイラストに…
と駆け抜けてきましたのであまり実感はありませんが(笑)
本当にあっという間なんですね。
「ブログ見たよ」とお声をかけていただいたりなど、嬉しい事もたくさんあります。
見て頂いている方のおかげでここまでやってこれました。
本当にありがとうございます。
これからもこんな感じで好き放題やらせていただこうと思っています!!
9月と言えば中秋の名月。
この日は旧暦で8月15日と定められており、毎年日にちは変わります。
今年は9月21日みたいですね。
月と言えば、私はマクドナルドの月見バーガーが大好きなんです。
毎年、月見のCMを見る度に「あぁ…秋だなあ~」と思っちゃうんですね。
お話が脱線しましたね(笑)
と、いう事で今回は月…に住んでいると言われる
兎について語りたいと思います!
日本人と兎の熱い絆
兎は古くから、日本人に愛される動物でした。
代表的な物だと、日本神話。
国造りの神である大国主命と因幡の白兎のエピソードが有名ですね。
大国主命は、兄弟である八十神が因幡に住む八上姫にプロポーズに行く旅に同行します。
八十神から軽んじられていた彼の役割は荷物持ち。
そんな折、毛を毟られて真っ赤になっている兎に出逢います。
聞けば鰐(サメの事だと言われています)を騙して返り討ちにあったとか。
意地悪な八十神は兎をからかいますが、大国主命は同情して傷を治す方法を教えてあげます。
感激した兎は「あなたこそが八上姫の夫になるだろう」と予言します。
兎の言葉通り、八十神のプロポーズはすげなく断られ、八上姫は大国主命と結婚するのでした。
大まかなあらすじはこんな感じ。
親切にすると良い事が返ってくる…という教訓話でもありますね。
鰐を騙した兎は自業自得な気もしますが…。
そんなちょっとズルい所も憎めなくて可愛いかも。
因幡の白兎とは関係ありませんが、兎を神の使いとしている神社もあります。
京都の宇治神社です。
手水所にはとっても愛らしい兎さん。
宇治神社は学問成就で有名でして、
受験や資格試験などを控えた方がお参りされる事が多いようです。
お守りも兎さんが描かれていて、可愛いんですよね。
写真は5年くらい前、京都旅行した時の物です。
平等院鳳凰堂を出て源氏物語ミュージアムに行く途中、
時間あるからちょっと寄ってくかぁ~と軽い気持ちで行った所、
とても神秘的で素晴らしい佇まいに感動した思い出があります。
(本当にバチ当たりな奴だな…)
またいつか、自由に旅行できるようになったら
行きたい所の一つです。
絵の中の兎さん
そんな愛されアニマルの兎。
もちろん色々な絵画にも描かれています!!
ご存じ、鳥獣戯画。
着物の柄にもよく使われていますので、ご存じの方も多いかと思います。
この絵が描かれたのは平安末期から室町初期と言われています。
作者は不明…ですが鳥羽僧正というお坊様ではないかという説もあります。
ただ、それを裏付ける証拠は現在も出ていません。
とても長い絵巻物な上に、それぞれの巻で作風も違うので
長い年月の間、色々な人によって描かれてきたという説が有力なようです。
甲・乙・丙・丁の4巻に分かれている絵巻物で、
最も有名なのは甲巻。上の画像です。
兎や蛙、猿などが二本足で立って、楽しそうに遊んでいます。
動物を人間のように描く擬人化という手法がとられ、
「最古の漫画」とも言われているそうですよ。
そう言われてみると動きもコミカルで可愛い!
もしかして日本人のDNAには、
こういったキャラ物を愛でる嗜好が組み込まれているのかもしれないですね。
ちなみにですが…
今年の4月から6月まで、東京国立博物館で
特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」が開催されていました。
全四巻の絵巻物を一挙公開という史上初の展示でした。
私もとても行きたかった。行きたかったのですが…
ちょうどその頃、東京での新型コロナ感染者が激増した頃でしたので涙を飲んで断念しました。
上の画像は衝動抑えきれずTwitterに投稿したイラストです(笑)
コロナ禍からずっと、何度もこうした悔しい思いをしております。
きっとたくさんの方が同じ気持ちだと思います。
本当に、早期の終息を願ってやみません。
ちょっとしんみりしてしまいましたね。
気を取り直してもう一枚、兎の絵をご紹介します。
月岡芳年「玉兎 孫悟空」
江戸末期の浮世絵師、月岡芳年の作品。
メインで描かれているお猿さんは西遊記でおなじみの孫悟空。
天竺の王女に化けた玉兎という妖怪を孫悟空が退治するというエピソードが元ネタです。
戦いに負けた玉兎は兎の姿に戻り、故郷である月に帰っていったそうです。
これは玉兎とのバトルシーンを描いているのですね。
孫悟空の迫力もさることながら、玉兎の躍動感も感じられます。
可愛らしい外見ですが、ボス感が漂っていますね!
ちなみにこちらの絵。
2017年に札幌芸術の森で開催された「月岡芳年展」にて
メインビジュアルとして大きく取り上げられました。
私ももちろん、見に行きましたよ!
入口にこんなフォトスポットがあったので、孫悟空になりきってみました(笑)
なんか兎の圧勝って感じですね…。
着物に使われる兎柄
愛らしい兎は絵画だけではなく、着物の柄にもよく見られます。
それはいつ頃からなのでしょうか?
こちらの柄、帯などでご覧になった事はありますか?
花兎(別名:花兎金襴)という柄です。
この花兎は、名物裂と呼ばれる柄の中の一つです。
名物裂は室町時代から江戸時代にかけて、
シルクロードを通ってもたらされた生地の総称です。
「唐草文様」「鳳凰柄」「唐子柄」も名物裂に入ります。
どこかエキゾチックな柄が多いですよね。
これからの生地は当時の文化人に愛され、
上流階級のたしなみであった茶道具を包む為に使われていたと言われています。
ちなみに本物の名物裂は東京国立博物館の東洋館に所蔵されています。
遥か昔、海を渡ってやってきた兎さんです。
他にも兎は、季節の柄と組み合わせて楽しまれています。
月とすすき、兎の組み合わせは秋を感じさせます。
冬は雪景色に雪兎。
桜と兎も、春っぽくて可愛いですね。
波に兎…も夏物によく使われる柄ですが、実は元ネタがあるのです。
能の演目「竹生島」
琵琶湖に浮かぶ竹生島に参拝にやって来た朝臣達の前に弁財天と竜神が現れる…
というあらすじなのですが(ざっくりしすぎ!)
劇中の謡曲の一節に「兎も波を奔るか」というフレーズがあります。
ここからとられた波に兎柄は、江戸初期頃から人気があったと言われています。
そんな兎さんはどのような意味をもっているのかと言いますと…
ピョンピョンと飛び跳ねる事から飛躍。
決して後ろに下がらない動きから前進。
そんな前向きな意味が込められているそうです。
お子様用の着物や浴衣なんかでも兎柄はよく使われます。
可愛らしいのはもちろんですが、
未来を担う子供たちにピッタリの柄ですね!!
ちなみに西洋でも、兎は縁起の良いモチーフです。
古くから兎の足をお守りにする風習もあります。
多産な兎は繁栄を表しているそうで
キリスト教の復活祭イースターにも兎は重要な役割があるのです。
「子だくさん」という事から、ちょっとセクシーなイメージもついているみたいですね。
海外の有名グラビア雑誌「PLAYBOY」のロゴも兎が使われています。
以上、兎について語らせていただきました!
ふわふわで、可愛くて、おめでたい。
古今東西で愛されている理由がわかる気がします。
他にも高山に語って欲しいお題がありましたら、ぜひ教えて下さい!
リクエストは常時募集中です♪
また、毎度お願いしている事ですが
伝承やお話は、地域や時代によって様々な説があります。
ご自分の知っている事と違ったとしても「間違っている!」
と思うのではなく「こういう事もあるのか」と違いを一度受け入れていただきたいのです。
知識に「絶対」はありません。
所説あり
という事で楽しんでいただけると幸いです。
高山の着物雑学帖は毎月15日を予定しております。
来月また、お会いしましょう!!
バックナンバー
その1 宝尽くしについて
その2 四君子について
その3 袴を語る~100年前のJK事情
その4 〇△ロ~水玉、ウロコ、市松について
その5 桜を語る
その6 浮世絵の見方~江戸女子のファッション
その7 浴衣について
その8 龍について
その9 おばけについて
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