着物雑学帖 その5 ~桜を語る~
- 投稿日:2021.04.15
- カテゴリ: 着物雑学帖
こんにちは!コモノハナポールタウン店の高山です。
さてさて、毎月15日恒例
着物雑学帖
をはじめさせていただきます!
トップの画像をご覧下さい。今回のテーマが描かれています。
おだんご?
確かに私は花より団子派なんですが、違うんですよねー。
今回は花こと
桜
について語っていこうと思います!
4月の今、本州ではもうあちこちで桜が咲いていますね。
桜は春の訪れを教えてくれるお花です。
北海道では桜が咲くのはもっと後ですが、
春限定の商品が並びだすと
街が一面ピンク色になって「あぁ~春だなぁ~」と感じます。
桜はバラ科の落葉広葉樹です。
花言葉は「精神の美」「優美な女性」
一口に桜と言ってもたくさんの種類がありまして
日本で一番有名なソメイヨシノ。
江戸時代に品集改良された比較的新しい種だそうです。
濃いめのピンクがキュートな八重桜。
北海道ではエゾヤマザクラがよく見られます。
言わずと知れた日本の国花でもあります。
毎年おなじみの桜開花予想。
花がいつ咲くかを全国ニュースで報道するのは日本くらいと言われています。
それほどまでに、長く深く愛されているんですね。
古の昔からの桜愛
ここで桜の名前の語源と言われる女神様をご紹介します。
彼女の名前は「コノハナサクヤヒメ」
その名の通り、花のように美しい女神様だそうです。
ある時、ニニギノミコトという男の神様が彼女に一目惚れ。
プロポーズをして結婚する事となりました。
ところが輿入れの際、コノハナサクヤヒメと一緒に招かれざる客がやってきました。
妹のイワナガヒメです。
姉妹の父であるオオヤマツミノカミが「二人一緒にお嫁にもらってね!」
とセットで嫁がせようとしました。親心…なんですかね?
※神話の時代も一夫多妻は普通にあったようですね。
イワナガヒメはコノハナサクヤヒメと正反対の容姿をしていたそうです。
ニニギノミコトは面食いだったのでしょうか、イワナガヒメを親元に返してしまいます。
実はイワナガヒメは永遠とも言える長寿の女神様。
彼女を拒否したニニギノミコトの子孫たちは、短命となってしまったのです。
ニニギノミコトは人間の祖と伝えられていますので
人間が花のように限られた寿命の中で散っていくのはこういった理由があるそうです。
コノハナサクヤヒメを祭神として祀っているのは浅間神社
静岡浅間神社が総本山ですが、全国に分社があります。
お参りする機会がありましたら、ぜひコノハナサクヤヒメに思いを馳せて下さいね。
そんな感じで古来より桜は「神の宿る木」として人々に愛されてきました。
奈良時代の和歌集、万葉集にも、桜を詠んだ歌が残されています。
当時は梅が圧倒的人気で、梅120首に対し桜40首だったそうですが、
その後の平安時代に作られた古今和歌集では桜の歌がドッと増えています。
その中でも有名な歌をご紹介。
世の中に たえてさくらの なかりせば 春の心は のどけからまし
(訳:もしこの世に桜が無かったら、咲いたり散ったりに一喜一憂する事なく、のどかに過ごせた事だろう)
平安時代の貴族で歌人の在原業平が詠んだ歌です。
当時の身分の高い人々にとって、和歌は必須でありました。
詠む歌の良し悪しで出世や結婚にも響いたと言われるくらいです。
歌が苦手な人は、上手な召使にゴーストライターをさせていたそうです。
そんな時代に生まれた業平さん。
彼の詠んだ歌は百人一首にも入っている程有名な歌人であり、
さらに高貴な生まれであり、おまけに超イケメンであったとか。
当然モテます。
そのモテっぷりは、源氏物語の主人公「光源氏」のモデルになったと言われる程でした。
上の一首は、桜を女性に置き換えて彼の羨ましい悩みを表現したという説もあります。
もしこの世に女性が存在しなかったら、惚れた腫れたで悩む事もないだろうね…
(訳:いや~俺ってモテてモテて困っちゃうんだよね~)
って感じでしょうか??
うーん爆発して欲しい…。
はるか昔から桜の花というのは日本人にとって特別だったんですね。
文豪も愛した桜
平安の昔から歌人たちに愛されてきた桜。
それは時代を下り、近代の文豪達も例外ではありませんでした。
作家や着物のデザイナーとしても活躍した宇野千代さん。
彼女の桜への愛情は有名でしたよね。
ご自身でデザインされた着物や食器などの桜柄は本当に素敵。
晩年にお召しになっていた桜の振袖が印象に残っていて、
素敵な年の重ね方をされているなあ~と思ったものです。
自身をモデルにしたと言われる「薄墨の桜」も名作です。
着物デザイナーの一枝、料亭の女将、その養女の芳乃。
読んだのは大分前ですが、彼女達の織り成す複雑な人間関係や、
女性の業を感じさせるお話は今でも記憶に残っています。
もう一つ、桜をテーマにした近代文学の名作をご紹介しますね。
桜の樹の下には死体が埋まっている!
このフレーズ、聴いた事がある方が多いかもしれません。
最近では都市伝説のように語られていますが、文学作品が元なんですよ。
梶井基次郎の「桜の樹の下には」という短編小説です。
タイトルそのまんまですね。
とある青年の独白という形を取っているのですが
美しい桜の陰に潜む不吉さ、美と醜、生と死のコントラストを表した作品です。
余談ですが前述の宇野千代と梶井基次郎は恋愛関係を噂されていた時期があったようです。
当時の作家さん達の人間模様とかも、調べると面白いんですよね。
桜は春しか着ちゃダメ?
「これは桜柄だから、春しか着れないね」
お客様から、たまにこういうお声が聞こえます。
そんな事はありません!
浴衣でも桜柄は毎年人気がありますからね、
通年着られる物もたくさんあるんですよ。
桜のお花単体やディフォルメされた柄などは通年楽しんでいただけます。
枝が付いている柄や写実的な柄は、季節を先取りして早春~春に着るのがオススメです。
決して「絶対に着ちゃダメ!!」って訳ではないんです。
日本の国花ですし、桜柄の愛好家の方もたくさんいらっしゃいますから。
ただ、季節感の強い物は時期を選んで着た方が「粋」だと思います。
例えばお茶席などの、季節を大切にする場所に着ていく機会がありましたら
ご参考になさってみて下さいね。
コモノハナのある札幌では、桜の開花は毎年ゴールデンウィークくらいです。
あと約半月…とても楽しみにしている今日この頃です。
札幌で桜の名所といえば、大通公園、中島公園、モエレ沼公園などでしょうか。
他にも、札幌市外で隠れた名所もあるんです。
古平町にある明和神社です!
この写真は3年前くらいに行った時の物ですね。
5月の初めころだったので、まだ咲き始めでしたが…
これが満開になった時の迫力は本当にすごい!!
小さくて静かな神社の佇まいと相まって、とても神秘的なんです。
もし機会があれば、ぜひ行ってみて下さいね!
いかがでしたでしょうか?
今回は桜のお話を…と思っていましたが…
気が付けば和歌や文学作品のお話多めになってしまいました(笑)
桜はそれだけ古今のクリエイター達のインスピレーションを刺激してきた
と思っていただけると幸いです。
他にも高山に語って欲しいお題がありましたら、ぜひ教えて下さい!
リクエストは常時募集中です♪
また、毎度お願いしている事ですが
伝承やお話は、地域や時代によって様々な説があります。
ご自分の知っている事と違ったとしても「間違っている!」
と思うのではなく「こういう事もあるのか」と違いを一度受け入れていただきたいのです。
特に神話は、神様達の名前や関係などたくさんの説もありますので
知識に「絶対」はありません。
所説あり
という事で楽しんでいただけると幸いです。
高山の着物雑学帖は毎月15日を予定しております。
来月また、お会いしましょう!!
バックナンバー
その1 宝尽くしについて
その2 四君子について
その3 袴を語る~100年前のJK事情
その4 〇△ロ~水玉、ウロコ、市松について
***ニッポンのおしゃれは無限大***
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