先日、家族信託の組成案件を実行致しましたのでそれに関する雑感を書かせて頂きます。
今回のご依頼の方は、ご自宅の他に収益不動産を2棟保有している方でしたが、①ご高齢であるため収益不動産の管理が困難になることに備えるため、②家族信託を設定した上で受益権を法人に移すことで不動産流通税を繰り延べるため、③将来発生する相続を見据えて財産の移転を自らの希望通りに確実に行うためという3つの目的を実現するために収益不動産2棟について家族信託を実行した案件でした。
家族信託の準備段階では、依頼者の財産状況の調査、希望の聞き取りに時間をかけて最善の方法を考えることに尽力しました。
スキームが決定したら即座に契約書類等の作成にとりかかりました。今回の案件では、受益権を保有する会社の設立から始めたため、通常の信託契約書や受益権譲渡契約書に加え、会社の設立関係書類や会社の株主総会議事録の作成も必要となりました。
実際に書類を揃えてみるとかなりの数にのぼり、ご高齢の依頼者の方にはかなりの負担になってしまったのではないかと感じています。また、受託者が関与する書類もかなり多く、無償で受託業務を行って頂くことが負担になることをあらためて感じました。
実行の段階では信託口座の開設に苦労しました。今回は地方銀行での口座開設を予定しておりましたが、話を聞いた2行とも受託者名義の口座開設を行ったことがないとのことであり、1からどのような目的の口座なのかを説明する必要がありました。結果的には片方の銀行で口座開設を認めて頂きましたが、「受益者●●受託者××代表取締役△△」という非常に長い名前の名義の口座が出来上がりました…。
このようにして家族信託を設定し、ひと段落はしましたが、今後も依頼者の残った財産についての遺言作成業務や信託の維持業務が残っており、家族信託を設定することは一生のお付き合いをさせて頂くことになるのだと改めて実感しました。
今後も不動産・株式の承継や財産の管理に悩まれている方のお力となるべく、家族信託の普及に尽力したいと思います。
※今回ご紹介した案件の依頼者からは情報開示についてのご同意を頂いております。