投稿日:2015年03月12日

【札幌 弁護士コラム】家族信託ってなんだろう?(3):家族信託と認知症・相続対策①

これまで述べてきたように信託には様々な機能がありますが、家族信託ではどのように信託が使われるのでしょうか。

まず、家族信託とは、法律上に決められているものではありませんが、一般的に家族(親族)を受託者として財産を信託する(預ける)ことをいいます。家族信託は主に相続対策や認知症対策において用いられています。

 

①認知症対策

家族信託によって認知症の対策ができるとされています。

認知症に罹って、法律的な判断能力なくなったと判断された場合、その方は法律行為(契約をしたり、遺言を書いたりすること)ができなくなってしまいます。すなわち、認知症に罹るとそれまでに蓄えた預貯金や不動産等が自由に動かせなくなってしまいます。

預貯金や不動産が動かせなくなってしまうと生活に必要なものが調達できなくなってしまったり、老朽化した自宅を直したり他人に売ったりすることもできなくなってしまいます。

このような認知症の問題のために、従来は後見人制度が利用されてきました。後見人は、裁判所の審判によって選ばれた資格者で、認知症になってしまった方(被後見人)に代わって法律行為を行う立場に立ちます。しかし、後見人は裁判所の審判を経なければ資格を認められないこと、被後見人の全財産を管理しなければならないこと、一定の財産の処分に関しては裁判所の許可が必要になることなどから必ずしも機動的な対応ができません。

一方で家族信託を用いた場合には、認知症になるおそれのある方(委託者)が、認知症に罹る前に信頼できる家族(親族)(受託者)に対して特定の財産を信託することで対策が可能です。委託者が健常である間は、受託者に指示することができるため、委託者本人が財産を持っている間とほぼ変わらないような管理・処分が可能です。それに対して委託者が認知症に罹ってしまった段階で、受託者に財産をどのように管理するか、処分するかどうかの判断権限が移るようにしておけば、委託者の判断能力の有無にかかわらず受託者が財産を管理・処分することができます。

例えば、80歳で認知症のおそれがあると思っているお父さんに50歳のお子さんがいる場合、お父さんが健常な間に自宅不動産をお子さんに信託しておき、委託者であるお父さんが認知症にかかった段階で、受託者であるお子さんが自宅不動産を売却し、売却代金でお父さんを介護福祉施設に入れるような対応を行うようなことが可能です。

(続く)