投稿日:2015年03月10日

【札幌 弁護士コラム】家族信託ってなんだろう?(2)

(承前)

③財産の性質を変える機能

これは少しわかりにくいですが、財産を信託に入れることで財産の性質を変えることができます。例えば他人に賃貸している不動産を信託した場合、委託者は不動産を受託者に渡す代わりに、受託者から賃料を受け取る権利(受益権)を得られます。すなわち、委託者の財産が不動産から受益権に変わったと見ることができます。このことによって、不動産のままでは流通させにくかったものが受益権に変わることによって流通させやすくしたり、不動産を保有していたときのリスクを回避したりすることができます。このように信託によって財産の性質を変えることでメリットを生むことができます。

 

④財産をまとめる機能

信託の多くは契約によって組成されるため、信託の数は信託の根本となる契約の数によります。信託契約を結ぶ場合、信託に入れる財産の数に制限はありません。このため、複数の不動産を一度に信託に入れ、1つの信託契約として管理することが可能です。一方で、信託契約を一旦結んだ後で、追加の契約を結ぶことで信託に入れる財産を追加することもできます。これを追加信託といいます。これらの手法を使うことで複数の財産を1つの信託によってまとめて管理することができます。このことによって複数の財産を管理することのコストを減らすことができます。このように信託によって複数の財産の管理をまとめることができます。

 

⑤財産の処分をさせなくする機能

信託は基本的に財産の管理や処分を他人に任せることを含みます。これを応用することで財産の不当な処分を防止させることができます。例えば、勝手に処分されたくない不動産を信託を使って管理だけを他人に任せたい場合、不動産を会社に信託した上、その会社の役員を利害関係のない第三者(例えば公認会計士等の専門家)に任せることなどが考えられます。このような手法は不動産の流動化においてよく用いられています。相続対策においても、子供に処分させたくない財産があるような場合、子供に受益権は渡しても処分についての意思決定をさせないようなことが可能です。このように信託を使うことによって、単純に財産を渡すのではなく、処分を制限するようなことが可能になります。