最近、「家族信託」という言葉を目や耳にすることがあるかもしれません。
家族信託は、相続税の範囲拡大や5人に1人が認知症になるとの予測が出される中で、相続対策や認知症対策として注目を集めている手法です。
家族信託は法律で決められたものではありませんが、信託制度を使って家族又は親族の中で財産をやり取りすることをいいます。家族信託の土台となるものは信託法という法律に基づく信託の仕組みです。
信託とは、他人と契約することで一定の財産を他人に委ね、他人に財産を管理してもらう仕組みです。財産から収益が上がった場合にはそれを返してもらったり、第三者に渡してもらったりできます。信託を簡単にいうと「他人に財産を預けること」に近いものといえます。
それでは信託とはどのようなものなのでしょうか。まずは信託の主な機能をご紹介します。
①財産を管理してもらう機能
財産を信託する人(これを委託者といいます。)は、誰に信託するかを決めることができます。このため、当然ですが財産を管理する人(これを受託者といいます。)は信頼のおける人でなければなりません。また、財産といっても専門的な観点からの管理が必要なもの(例えば毎日相場が変わる株式などの有価証券など)については、受託者に専門性をもった管理方法をとってもらわなければなりません。逆にいえば、専門性を持った人に任せられるのであれば委託者も利益になる部分があります。このように信託には財産を他人(受託者)に管理してもらう機能があります。
委託者→受託者:財産の管理を任せる(財産を預ける)
②財産を独立させる機能
財産を信託に入れる場合、その財産の名義は受託者のものになります。しかし、この財産の名義は受託者であるものの、委託者から任されたものであるため、受託者は好きにその財産を処分できるものではありません。一方で、受託者に対して債権を持っている人は、受託者の資金状況が厳しくなったら受託者の財産を差押えてでも取立てを行いたいと考えます。しかし、信託に入れられた受託者名義の財産は委託者から管理を任されているものですので、取立てを受けないこととできます。これは信託に入れられているからこその効果であり、信託には財産を独立させてわかりやすく言えば、債権者から見ると財産を委託者のものでも受託者のものでもないものとする機能があります。
(続く)