投稿日:2015年02月01日

【札幌 弁護士コラム】債権回収AtoZ(1)

債権回収は企業活動を継続するにあたって、常に問題となります。売上げが立っても、実際に売掛金が入ってこなければ企業活動は停止してしまいます。このため債権回収は企業活動の根幹を担っているといえるでしょう。今回は売掛金の特徴とリスクの考え方について書きたいと思います。

 

○売掛金の回収はなぜ必要?

当然ながら企業の運営のためには資金が必要であり、資金の確保のためには売掛金を現実に企業に入れる必要があります。

それに加え、1つの取引先に対する売掛金を回収しなければ他の取引先について回収リスクが発生する場合があります。すなわち、回収が滞っていることが他の取引先に発覚すると、他の取引先が自分のところだけ支払うのはおかしいという不公平感を感じて支払わなくなることや、他の取引先が支払わなくても取り立てられないものだと考えることにより支払わなくなる可能性が生じます。

また、売掛金を早期に回収しないと、時効にかかってしまったり、取引先の資金繰りが厳しくなって法的手段を使ってコストをかけなければ回収できなくなってしまう恐れが生じます。

 

○売掛金の回収についての考え方は?

支払期限が来たら極力早めに回収することが重要です。特に分割払いになっているような場合には毎月入金があるかを必ずチェックすることが大切です。分割払契約の場合には、通常、期限の利益喪失条項(支払いが滞れば一括で請求できるとの条項)が盛り込まれていますので、どのような条項になっているのかをきちんと確認しておく必要があります。

また、請求書の送付、督促状の送付、内容証明郵便の送付、法的手続の実行のタイミングをルーティーンとして企業内で定めておくことも重要です。法的手続を執るとなると、相応のコストがかかってきますので、どれくらいの債権額であれば法的手続に移るかを決めておくことも必要です。法的手続を執る場合でも自社内で手続を行うのか、弁護士に依頼するのかの基準を作っておくということも迅速な対応のためには重要です。

 

○売掛金を焦げ付かせないためには?

与信管理と契約書等の証拠の作成が重要です。

与信管理とは、取引の相手方が信頼できる者(会社)かを見極めて、売掛金の発生をどれくらいまで許容するかを判断することです。与信を与えれば与えるほど大きい取引が可能となりますが、反面で売掛金の回収リスクを負うことになります。与信を与えられる余力がない者(会社)に対しては、こまめに支払いを求めたりすることが必要です。

契約書等の証拠は、いざ支払いが停止したという場合に有益になります。支払いが滞った場合の取引先は、往々にして支払わなくてよいための理屈を述べてきます。その際、契約書が作成されていなければ取引先の主張が法律的に誤っていることの断定が難しくなる場合がありますので、その備えとして作成が必要といえます。訴訟等の法的手続に移行した場合にも当然必要です。

契約書の作成は面倒な部分もありますが、最低限の契約書の作成でも一定の効果を発揮することが多く見受けられます。最低限の部分とは、①いつ契約したか、②誰が誰に金銭を支払うか、③いつまでに金銭を支払うか、④いくら支払うか、⑤金銭の支払う理由は何か、⑥金銭の支払いに条件があるか、という程度です。この程度の内容の書面があるかないかで後の処理が大きく異なってきます。

一つ注意して頂きたいのは、見積書や請求書は「契約書等の証拠」に該当しないということです。見積書や請求書は、金銭を請求する側が作成した書面ですので、金銭を支払う義務がある者がその義務を認めた書面とはいえません。見積書や請求書を発行した場合には、必ず請書や確認書等を作成してもらうようにすることが必要です。