投稿日:2022年12月14日

【札幌 弁護士コラム】ある日の書記官とのやり取りに学ぶ、ザルコミュニケーションを止める術

おはようございます、荒木でございます。

 

今日は東京に出張で来ております。

行きの飛行機はほぼ満席と、コロナの影響が薄らいでいることが実感されます。

 

今回のお話は、以前に、裁判所書記官からあった電話について、です。

私(荒木)がある会社の代理人として、会社法上の若干マニアックな手続を行っており、申立手続の後、裁判所書記官から突如電話がありました。

 

書記官「先日の申立ての件ですが、いくつか確認事項がありますので、よろしいでしょうか。」

荒木「どうぞ。」

書「それでは申し上げます。申立書添付の○○という書面ですが、そちらは原本を提出して頂いていいでしょうか。」

荒「はい、追って提出します。」

書「それから○○という議決については要件を満たしていないかと思いますので、確認をお願いします。」

荒「はい、わかりました。」

書「あと、○○という書面については住所の記載が…。それから○○という書面記載の金額の根拠が…。○○の書面については、前提資料が…。」

荒「ちょ、ちょ、ちょ。少し順番を整理してお話頂けませんか。こちらも準備して待っていたわけではないので。」

書「はい。あと、税理士先生の作られた○○という書面については、ここの金額が…。それと○○は最新のものがあるはずなので…。○○は根拠が…。」

荒「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ。あの、税理士の先生が作った書面については細かいことまですべての内容を把握しているわけではありませんので、もう少し詳しく質問事項を教えて頂けますか。」

書「ええ。」

荒「あと、『~あるはず』、と仰いますがそんな書面作ってないですよ。作成すべき法的な義務もないですし。」

書「いや、それはあるはずだと思うんで、出して頂きたいんです。」

荒「(だからねぇって言ってんだろ!)…はぁ。ではこれから作成を検討しますね。他の質問は何ですか。」

書「ええ、ですから、○○で○○で○○で…。」

荒「はぁ…(何とかメモを取るが内容はつぶさに確認できていない状態。)。追って検討の上、ご連絡します。」

 

…後日。

税理士の先生からは、書記官からの質問と出した書面の整合性が不明なため、質問の趣旨を確認してもらいたいという連絡。

私(荒木)のほうで整理したうえで、書記官に確認の電話をしました。

 

荒「先日頂いたご質問ですが、○○という用語は書面上出てきていないのですが、どの証拠のどの部分を指しているものなのでしょうか。」

書「ええ、甲○号証のことですよね。」

荒「いや、そちらの質問が何を指しての質問かがわからないので質問しているんです。」

書「なので、甲○号証では○年の部分と○年の部分が…。」

荒「いえ、ですので、そこに○○という用語が書かれていないので質問してるんですよ。」

書「私が裁判官から受け取ったメモには○○と書いてあって…。」

荒「じゃあ先日の電話での質問は意味が分からずに言っていたんですか?」

書「わかりました、内容を裁判官に伝えますので、質問内容を書いてFAXでくれますか?」

荒「はにゃ!???(なんで質問してるのそっちなのに、こっちが質問の質問を書いて伝えなきゃならんのよ!)」

 

…という感じで対応されてきたわけです。

まぁ民間企業なら瞬殺で潰れる顧客対応ですよね(汗)。

 

いくら相手が担当弁護士でその人自らが作成した書面であったとしても、アポもなく突然電話してきて共通認識を確認せずに矢継ぎ早に質問するのは質問する側のマナーとしてどうかと思いますし、そもそも質問の趣旨が伝わらなければ質問者側としても解決が図れないはずです。

 

また、質問の数が多くなるのであれば書面で出すべきでしょうし、口頭でなければならない事情があるのであれば、「○について○点、○について○点質問があるのですが、今から話してよろしいでしょうか。」くらいの前振りはあってしかるべきでしょう。

 

そして「~なはず。」、「裁判官は~」というのはまるで自らに当事者意識のないことの表れであり、こちらの意見を聞く気もなければ、自ら内容を咀嚼して伝えようという気も感じられません。

 

さすがに書記官といえどもこれだけひどい、穴が空き放題の「ザルコミュニケーション」をしてくる人はまれですが、根本的に職務的な問題なのか、コミュニケーションがうまいと感じる人はごく稀です。

弁護士風情とコミュニケーションを上手く取ったところで何ら評定に影響しないのかも知れませんが、一事が万事、プライベートでもこんなコミュニケーションしかできないのだろうし、損ばかりしてるんだろうな、とつい思ってしまいました。

 

ま、他人は他人ですので、以下にこんなことから教訓を得るかが大切なのでしょう。

 

・受け手のことを考えた質問の仕方を考える

・当事者意識を持って対応する

・問題解決に何が必要かを考えてから動く

・相手に負担を与える考え方をしない

 

今回はこんなことを学んだような気がします。

 

そうだとすると1粒で4度くらいおいしい(?)体験だったのかもしれません。

こう考えるとたまのこんなエピソードも、ちょっとした認知のスパイスをもらったようで、有益なことだったように思えてくるものです。

 

コミュニケーションにおけるちょっとした気遣い、忘れないようにしたいものですね。