投稿日:2022年02月05日

【札幌 弁護士コラム】税務調査で調査官に論理破綻しているとまで言っておきながら、修正申告に応じた本当のワケとは

こんばんは、荒木でございます。

 

昨日は朝から紛争案件対応など。

それほど予定が詰まっているという感じではないのですが、精力的に案件対応に取り組んでおります。

 

さて、実は当事務所には昨年後半から税務調査が入っておりました。

「お前、さては所得隠しでもしてたんだな!」とお叱りを受けそうですが、年度ごとの所得が大きく変わった年があったことから調査対象にヒットした模様です。

(一応、若干の申告ミスと解釈の問題だけで、収入に関する指摘はありませんでした。)

 

そのような中で、調査官との間で、最後まで必要経費性の問題として残った論点がありました。

そしてその議論を行ったのが昨日というわけです。

この論点、裁判例も出ているものですが、どうしても理論的に納得できないために色々と理論武装して意見を述べたのですが、調査官は裁判例を持ち出して「…以上のような理由で、当方はこのような解釈を取っているので、ご納得いただけないでしょうか。」の一点張り。

調査官に対して顧問税理士さんと一緒にあれやこれやと事例を挙げ、ツッコミを入れて行くのですが、何を言っても「…以上のような理由で、当方はこのような解釈を取っているので、(以下略)」と同じ主張を繰り返すばかりでした。

調査官の説明は、結局、受け入れられるには至りませんでした。

 

最終的には、私(荒木)が「それって理論的に破たんしてますよね?」と言っても「当方の解釈はー」と取り付く島もない様子になってきました。

その挙句、「確定申告の時期も近いですし、もう直近でお会いすることもできないので、今日中にこちら(修正申告後の内容)を承諾して頂ければ…。」と述べる始末。

私(荒木)は最終的にはその提案を飲むことにしました。

 

私(荒木)がこの最終提案を飲むことにした理由の1つには、この論点については裁判例があり、国税当局の見解を覆すとすれば最高裁まで争って勝訴するよりない状況だったということがあります。

弁護士などであればよくわかると思いますが、下級審で出されている判決と言えども、それを覆すのは絶壁を垂直登攀するくらいの覚悟が必要なものです。

とにかくめちゃくちゃに大変なことは目に見えています(だからこそ、調査官は理論的に破たんしていても、足元を見て強弁を主張してきたわけですが。)。

 

しかし、それは私(荒木)が折れた主たる理由ではありません。

主たる理由というのは「大局観を持って見た場合には折れるべきことが正しいと判断したから」、言葉を分かりやすくすると「損をして得を取るべきだと考えたから」ということになります。

ここでの大局観というのは、私(荒木)の経済的な部分もありますが、顧問税理士さんの負担もありますし、訴訟になることで一般論として世間に影響を及ぼすこともあります。

このようなことを総合していえば、このミクロな問題にかかずらわるよりも、認めるところは認めて本業に勤しむなり、新しいことを始めるなりしたほうが生産的ですし、周囲にもいい影響があるはずだと考えました。

 

さらに考えたのは、この調査官の立場です。

もちろん本件では利害関係と見解が対立しており、いわば「敵」の存在ですが、(主張の中身は措くとしても)公益のために働いている(と私は信じている)わけですし、私(荒木)の私利によって次の案件に取り掛かれないとしたら公益を害することになってしまいます。

また、私(荒木)の案件を含めて仕事を離れるとしたら、この調査官も一市民であるわけですし、無駄にストレスを与えてしまったり、気分を害することはしたくないわけです。

 

そんな理由から、私(荒木)は理論的には納得はいかないものの修正申告をすることとしました。

 

もちろん以上は単なる一事例ですし、私(荒木)の対応が必ず正しいと言うつもりはありません。

しかし、1つ言うとすれば、問題に直面して自分の利害を考えたとき、自分の視点を離れ、少しでも広く視野を持つことができるとすれば、様々な物事の捉え方ができるということができるのではないでしょうか。

そうして視野を広げることで心の平穏を保つことができるかも知れませんし、相手の立場を慮ることで納得ができる部分ができるかも知れません。

そうしたことの1つ1つの積み重ねが無駄な紛争を減らす重要な手段と言え、回りまわって自らの利益につながってくるのではないでしょうか。

 

まぁ、今回の一件では社会を知るという意味での大変な勉強になりました。

とはいえ、この勉強は二度としたくないですけどね(笑)。

 

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