投稿日:2022年01月25日

【札幌 弁護士コラム】中小企業経営者にこれだけは知っておいてほしい法律のお話(2):紛争の宝庫、それは労働問題

こんばんは、荒木でございます。

 

昨日は朝から、司法修習生の来客、社外取締役を務めるエコミックの各種役員会、昼過ぎからは東京出張等で不在にしていた間に溜まった仕事を怒涛の勢いでやっつけ、夜はジム通いと、多忙な一日でございました。

これだけ怒涛の一日を過ごすと生きている実感が湧きますね(笑)。

 

さて、中小企業法務の話を続けます。

 

今回はズバリ「労働問題」です。

私(荒木)は45社ほどの企業の法務顧問、上場会社の社外役員を2社務めていますが、やはりどの会社でも労働問題というのは少なからず存在するものです。

むしろ、その中で1つも労働問題(又はそれに準ずる問題)を抱えていない会社は、ほぼ存在しないといって過言ではありません。

 

労働問題は多種多様であり、時代の流れによる部分もありますが(昔は労働組合の関係の問題、最近はセクハラやパワハラといった問題など)、中小企業がまず気を付けるべきは「賃金未払い」と「解雇無効」の問題です。

 

「賃金未払いは大丈夫ですか?」と訊かれると、多くの経営者は「そんなもの当たり前だろ!払ってるに決まってるだろ!」と言いそうです。

しかし、突き詰めた問いをしてみると、「賃金を払っている根拠は何ですか?」とか、「時間計算はどうやるか分かってますか」とか、「休日の日数は何日ですか?」とか、「深夜残業は何時から何時までで、何パーセント上がるかご存知ですか?」とか、「みなし残業代が有効なものになる要件はご存知ですか?」とか、そこまで突っ込まれるとなかなか答えられない方もいらっしゃるでしょう。

これこそが賃金未払い問題の本質なのです。

 

それというのも、実は賃金計算というのは極めて複雑なものなんです。

法律上は1分単位で清算されるべきものですし、それを計算するためには時間計算を緻密に行う必要がありますし、残業のルールや休日のルールも守らなければなりません。

本当はそのようなことをして初めて正確な金額が出るのですが、そこまでを理解している経営者はそうはいません。

また、残念ながら弁護士や社労士を顧問に付けていても、厳密な賃金計算を行うことにそこまでコミットしてくれる人は多くありません。

だからこそ、経営者の素直な感覚だけで給料を払っていても、実はどんぶり勘定だった、ということが往々にして起こるのです。

このような賃金未払い問題をクリアするためには、(もちろん専門家の力を借りながらですが)経営者自身が賃金計算のルールをそれなりの程度は勉強しておく必要があるでしょう。

 

また、もう一つのありがちな問題が、解雇無効のトラブルです。

これも経営者に、「どんな場合なら従業員を解雇できると思いますか?」と訊いた場合にどのように答えるかで、その経営者がトラブルを起こす可能性が大体わかるものです。

「仕事できないなら辞めてもらうしかないでしょ。」と答えるような経営者だと、相当な確率でトラブルになります(汗)。

 

実は、解雇が有効になる要件というのは明確に定められていません。

「解雇権の濫用に当たらない」というのが要件です。

「何これ?どういうことなの?」と思われるのも当然です。

弁護士だって「これくらいなら解雇が有効じゃないの。」とか「さすがにこれは解雇無効でしょ。」といったレベルの感覚的な部分しかなく、どこからどこまでが「濫用」なのか明確に示すことができません。

明らかに重大な犯罪行為を犯したとか、理由もなく無断欠勤が継続しているといったような明確な理由があれば別ですが、成績が少し振るわない程度だったり、上司に対する態度があまり良くないといった程度では簡単に解雇できません。

 

一方で、解雇が無効とされた場合のリスクは、会社にとっては非常に大きいものになります。

なぜならば、解雇をしたつもりの従業員から訴えを起こされ、敗訴した場合には、その従業員は1日も働いていないにもかかわらず、会社は、解雇した日から現在に至るまでの賃金を支払わなければならず、おまけに遅延損害金(年3%)も支払わなければなりません。

さらに恐ろしいのは、敗訴したらそれで終わるわけではなく、新たな解雇事由が発生しない限り、その従業員が退職するまでは賃金を払い続けなければならないというエンドレスゲームになってしまうことです。

 

どうです?

少しは従業員を解雇するのが怖くなったんじゃないですか?(笑)

 

そんなわけで労働問題、とりわけ賃金未払いと解雇無効は頻発するものであり、是非とも経営者には一定のお勉強をしておいてもらいたい部分といえます。

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