投稿日:2021年09月25日

【札幌 弁護士コラム】あなたの知らない弁護士の使い方の世界

こんばんは、荒木でございます。

 

またしてもご無沙汰しております(汗)。

本業のほうではおかげ様で忙しくさせて頂いており、今月は過去最高益ならぬ、過去最高報酬発生数(?)(要は着手する案件と終了して成功報酬が発生する案件の数が多かったという趣旨)ではないかという月になりました(ちなみに顧問先も1社増でした。)。

というわけで第二領域がどうもおろそかになりがちではありますが、残りの1週間も気を引き締めていきたいと思います。

 

さて、そんなわけで最近も色々とお仕事を頂いているわけなのですが、ちょっと変わり種のお仕事がありましたので、そのご紹介を。

いわゆる「弁護士案件」とは異なり、こんな使い方もできるのか、というご参考になればというところです。

(ただし、全ての弁護士が下記のような案件に向いているわけでもない、ということにはご留意を(笑))

 

(1)社内トラブル回避ヒアリング

1つ目は、社内トラブル対応。

よくある従業員間のトラブルといえばパワハラ問題やセクハラ問題なのですが、今回のケースは結果的にどちらにも当たらないようなものでした。

従業員間の折り合いが悪く、職場環境が悪いため、従業員からのヒアリングを行って、簡単にいうと仲直りさせてほしいというお話です(汗)。

 

こうなってくると法律論と解決方法は全く別のもの。

専門知識が活かせるような話ではないと思われるかも知れません。

 

しかし、弁護士の能力というのは、実は法律の知識だけではなく、法律を使うという能力も持ち合わせているものです(そういう教育を受けています。)。

それというのが、法律を適用する前提として、事実を認定するという能力です。

客観的に事実を認定するために、どの程度の証拠が必要なのか、どのような経験則を用いるのか、どちらの人の話が確からしいのか、ということを考える能力を養っています。

 

この件では、ヒアリングを通じて社内で何があったのかを認定し、それを代表者の方に報告することになっています。

その後、解決まで一緒に話し合ってほしい、と言われているのですが、この話し合いではどんな能力が試されるのか今から楽しみに(?)なっています。

 

(2)就業規則の改正説明

2つ目が就業規則を改定するということで、それを従業員の方に説明してほしいというご依頼でした。

改定する就業規則の条項はたったの1条。

しかも、ある程度の常識的な規制を加えるというものですので、社長さんや管理担当取締役の方から説明して頂けば足りるようにも思っていました。

 

しかし、よくよく考えてみると、説明する相手は入社数年という高卒若手の従業員の方。

そもそも「就業規則って何なの?」と言われてしまう可能性もあるため、そこからの説明が必要です。

そして、改定する規定の説明の前に、何を目的にした改定であるのか、会社にとってなぜその改定が必要であるのか、なぜ従業員がそれに従わなければならないのかも説明しなければなりません。

 

それからようやく改定の内容の説明に入ります。

改定するのは短い条項ですが、一般用語に置き換えて説明しようとすると、これがまたなかなかに厄介なものです。

法律用語という法律用語は全て定義を説明しなければなりませんし、読んでピンと来なさそうな部分は例を挙げなければなりません。

その上で条文操作についても説明を加えることが求められます。

 

そして、従業員の方の最大の関心事である、「違反したらどうなるか」の説明も行わなければなりません。

ここの説明が雑だと、「こんなことをしただけで懲戒解雇されてしまうんだ。」という誤解を与えてしまいますし、あまりに形式的な説明だけでは従業員に対する抑止力になりません。

まさしく「いい塩梅」で伝えることが求められる場面でした。

 

このように、法律や条文の趣旨から説明できるというのも弁護士の1つの能力ですので、何か条文をいじるだけではなく、既存の契約や就業規則などの解説をさせるという弁護士の使い方も一考ではないかと思った次第です。

 

(3)委託業務契約の内容確認

3つ目はわりと弁護士の本来業務に近いお話。

業務委託契約を結んだのだが、委託元から契約にない業務をやれと言われて困っているというご相談でした。

当然、業務委託契約が絡んでくる以上、契約の解釈等の法律論が含まれています。

また、事後的とはいえ、一種の交渉である以上、弁護士の業務といえるようなお話ではあります。

 

しかし、ご依頼を頂いた趣旨としては、「自分が直接話をすると感情的になってしまうから代わりにやってほしい。」ということ。

当事者でなければわからないことがある反面、当事者であるからこそ近視眼的になり、また感情的になってしまうというのも無理からぬところです。

 

こういった場合、弁護士ではなく、重鎮の経営者や弁護士以外の士業に依頼して仲裁役のようなものを依頼するケースもよく見受けられます。

もちろんそれでうまく行くケースもありますが、却って関係をこじらせてしまうケースもあります。

 

一方、弁護士の教育の中では、「相手方の対応を読む」ということも行われています。

すなわち、「自分がこうしたら相手がこう出る」ということを考えながら案件を進める訓練です。

これをやることとで相手の考えに立たなければ交渉がうまく進まないことを体得し、いわゆる「落としどころ」という感覚を身に付けているのも弁護士の能力の1つです。

 

この件については未着手ですが、やるべきことは双方の言い分を聞き出して落としどころを見つける解決を図ることではないかと考えております。

 

以上、弁護士っぽくない業務を3つほどご紹介しました。

どうですか?

少しは弁護士に対する見方も変わりましたか?

弁護士って意外と色々な使い方ができることをご理解頂ければ本望です。