こんばんは、荒木でございます。
今日は午前中からつなぐ相続アドバイザーズの打合せ、午後は顧問先様との打合せ、交通事故の現地確認、夜はオンラインでの会合です。
さて、昨日はM&Aのメリットについてお話しましたので、今日は留意点のお話をしてみます。
(1)市場に出回るかの問題
まず大きな問題になるのが、M&Aの対象になるような会社が市場に出回るか、ということです。
当たり前の話ですが、十分な収益性が見込め、何の問題もない会社であれば、手放したくないというのが普通です。
業績が下がってきたり、何らかの問題があるからこそ市場に出回るのですが、そうすると真っ当な値段がつかなくなっていることも往々にしてあります。
健全な形で売りに出る可能性が高いのが、後継者が不在で売りに出る事業承継がらみの場合です。
しかし、この場合であっても、社長が「家業」として会社を考えているような場合には、「家業」と「事業」を切り離して考えてもらうための時間というのも必要です。
この点についてはまた改めて書いてみたいと思います。
(2)値決めの問題
売主も買主も最大の関心事になるのが「いくらで売れるのか」という問題です。
これが難しいのは、会社には個性があるため、評価するポイントがそれぞれで異なるということに起因します。
特殊な技術やノウハウがあれば赤字の会社でも高い値段が付くこともありますし、逆に黒字でも将来性の低い業種であれば低い値段しか付かないこともあるでしょう。
ものすごく単純な値決めの仕方としては、売主の会社の「純資産額+営業利益○年分」といった方法がありますが、これも簿価を時価評価する段階で評価が分かれますし、「営業利益○年分」というところでも判断が分かれうるところです。
最終的には買主がどこに価値を感じているか、という点に集約され、売主がそれに納得できるかどうかが成否の分岐点となることが多いのではないでしょうか。
(3)偶発債務の問題
「偶発債務」というのは、帳簿上ではわからなかった債務が突然(後になって)出てくることです。
典型例としては、従業員の残業代、経理処理をしていなかった買掛金、事故などによる損害賠償金債務などが挙げられます。
こうしたものが買った後になって出てこないようにDD(デューデリジェンス)を行うわけですが、それで100%回避できるかというとそうでもありません。
このため、譲渡(M&A)に関する契約書上、「表明保証条項」というものを入れて対処したりもします。
すなわち、売主に対して偶発債務が存在しないことを約束させ、後で発覚した場合には、買主が損害賠償請求ができるようにするというものです。
これらの対策を講じたとしても、完全にはリスクを回避できないことから、買主としてはある程度のリスクを織り込んでおく必要もあると考えられます。
(4)PMIの問題
「PMI」とは、Post Merger Integrationの略で、M&Aの実行後に行われる事業や経営の統合作業のことをいいます。
よく言う話では「企業の風土」を合わせるための作業です。
これがうまくいかないとM&A自体のメリットがなくなってしまうのであり、重要なプロセスであるといえます。
これがなぜ難しいかというと、M&Aは男女の出会いとは違って、お互いがお互いの会社を徐々に知ってから一緒になるのか決めるのとは違い、特に売主側の従業員にとっては事前にM&Aのことを聞かされることがなく、ある日役員から「売ることが決まった」と聞かされるのが通常だからです。
戦前、親が結婚相手を決めてきた時代と同じような感じかも知れません。
株式譲渡のような形で事業の内容自体が変わるものでなければ大きな影響がありませんが、合併してそれぞれの事業が混ざり合うような形態の場合にはなかなかに大変な作業になってきます。
単純に数字だけを見てもM&Aがうまくいかないことの原因は、このようなところにもあります。
次回もM&Aの話を続けます。