こんにちは、荒木でございます。
今日は、朝からwebセミナーで大企業におけるコロナ対策の実情を勉強、午後からは業務の専門書を読んで明日の業務に備えています。
さて、契約書シリーズもだいぶ回を重ねてきましたが、いよいよ弁護士の本懐となるトラブル関係の話です。
トラブルの類型ごとに解説をしていきたいと思います。
①契約書がないために生じるトラブル
中小企業などを中心として、契約をしているにもかかわらず、その契約書を作っていないがために生じるトラブルがあります。
よくあるのが口頭ベースでの約束をしていたか、していないか、という話です。
そうなってしまうと、契約があったとするほうが何らかの方法で契約の存在とその内容を証明しなければなりません。
契約書がなければ、見積書、注文書、請求書、領収書等を組み合わせて証明をしていくことになります。
そういったもので証明できなければ、やり取りを行ったことがわかるメールやFAXなどが証拠となってきますが(最近では企業関係でもLINEも増えてきています。)、契約の中身までが明確になる証拠になるとは限りません。
メールやFAXなどもなければ、社長の記憶1つで勝負しなければならなくなりますが、これはこれでかなり大変なことになってきます。
そんなわけで、当たり前の結論になりますが「契約書を作ることは重要」ということです。
②契約書の内容と実態が異なるために生じるトラブル
よくある話としては、「融資のために契約書を作ったが、実際はそのような内容の契約ではなかった。」という話です。
本当にコレ、多いです。
融資のためだけに実際と異なる契約書を作るのは絶対にやめて下さい。
「銀行の担当者がこの契約書でいいと言った。」というのは何の意味も持ちませんので、銀行が言うがままに契約書を作らないで下さい。
お願いしますm(_ _)m
…っていうくらいにトラブルが多く発生しています。
また、意図せずに契約書の内容と実態が異なるケースとして多いのは、実態が異なるにもかかわらずネットなどで落ちているひな型をそのまま使って、契約書を作ってしまうケースです。
これもかなり危険な行為ですので、十分に内容を吟味するか、わからなければ専門家に相談してからご使用ください。
③不当な契約内容や契約の方法を採ったために生じるトラブル
事業者と消費者との契約であれば、内容や方法が不当な場合、消費者法に基づいて一定の場合には無効とされることになります。
最近では事業者同士の契約において、契約の拘束が強い、十分に内容を説明することなく契約を迫られたなど、不当性が争われるケースも増えているようです。
消費者の場合には、通常、情報弱者として保護されるべき要請がつよいため、消費者法で保護されますが、事業者の場合には情報を持ち、判断能力が高いとされるため、法律による保護がなされる場合が少ない(ほとんどない)というのが現実です。
もちろん、詐欺といえるような場合や、強迫(脅迫)されて契約を結ばされた場合には契約を取り消すことができますが、単に注意を欠いていて契約条項を見落としていたような場合には保護されません(=なかったことにできません。)。
④契約書の内容の解釈が異なるために生じるトラブル
このトラブルは比較的次元の高いトラブルであるといえ、確率としてはそう高くないものと思われます。
訴訟になって争われるのは、(1)事実認定と(2)法律論の2つのパターンがありますが、(2)で争うケースはそう多くはありません。
そのことを裏返して言うなれば、一定程度きちんとした契約書を作ったのであれば、トラブルになる確率が大きく減る、ということがいえるわけです。
この類型でトラブルになるとすれば、契約の目的となっている物の品質であったり、規範的要件(例えば、「善良なる管理者の注意義務」、「やむを得ない事由」、「重大な過失」等)の解釈が争われたりするケースです。
このレベルになってくると契約書を作成する段階では、必ずしも避けることができないところになってきますが、契約書作成段階でそのリスクを考慮しておくことは必須であるといえます。
以上のように、契約書のトラブルは一定の類型があるのであり、避けようと努力すれば相当な確率で避けられるものです。
重要なのは、契約書を作成せずに事を進めたり、吟味せずに契約書を作成したりする前に専門家を関与させておくことです。
このような意味で顧問弁護士を持ち、全ての契約関係をチェックしてもらう(←「全ての」が重要です。)ことが必要になってくるわけです。
顧問業務の話に少しは行ってきましたので、次回は顧問業務とは、顧問弁護士とは、という話をしていきたいと思います。