外国人在留資格業務、M&A業務など、
最近は色々な業務を行っていますが、
家族信託業務にも引き続き取り組んでおります。
<株式会社つなぐ相続アドバイザーズHP>
クローズアップ現代などのテレビや週刊誌などにも
取り上げられることが多くなっており、
お問合せも増えておりますが、どうしても途中で
家族信託の手続を進められなくなってしまうケースが
あります。
大きく分けると以下のようなケースです。
(1)ご本人の意思能力に問題があるケース
まず、家族信託を実行するご本人に認知症の症状が
進んでしまっているような場合、法律的に
家族信託が進められないことがあります。
これは、家族信託の手続(=信託契約の締結)を
進めることは法律行為にあたり、ご本人に
法律行為を行う能力、すなわち意思能力がなければ
法律行為ができないことによります。
この意思能力があるかないかの判断は、法律的な
判断になってくるため一概には言えない部分がありますが、
私(荒木)がひとつの目安としてお伝えしているのは、
長谷川式簡易知能評価スケール(HDR-S)で
20点以上 → 概ね意思能力あり
10点以上20点未満 → 微妙なところ
10点未満 → 概ね意思能力なし
という基準です。
(もちろん経歴や周辺状況等によって判断が異なりますので、
あくまで目安としてお考え下さい。)
この意思能力が認められないために、家族信託が
進められないというケースが存在します。
(2)信託口口座が開設できないケース
また、家族信託を設定するにあたっては、財産を
預かる受託者が、自分の個人財産と預かった財産を
区別して管理する義務(分別管理義務)があります。
このため、金銭を預かる(受託する)場合には、
個人の金銭と分ける意味で特別な預金口座である
信託口口座を開設する必要があります。
しかし、この信託口口座はどの金融機関でも開設できる
ものではなく、北海道などにおいて開設が可能な
金融機関は極めて限られているのが現状です。
このため、家族信託を進めたいとしてもこの信託口口座が
ネックとなってしまい、スムーズに進められないことが
往々にしてあります。
どうしても信託口口座が開設できない場合には、受託者の
個人口座として新しい口座を開設し、それを信託口口座の
代用として利用するときもあります。
しかし、受託者の破産や、受託者に差押えが来た場合、
受託者が死亡した場合などにトラブルになる可能性があり、
お勧めできる方法ではありません。
(3)ご本人の意思が固まらないケース
やや趣旨の違う切り口ですが、信託をされる予定のご本人の
意思が固まらず、家族信託を進めることを断念するケースが
あります。
それというのも、家族信託のご相談というのはそもそも、
ご本人が認知症になった場合や準備なく亡くなった場合に、
ご家族が苦労することが多いことに端を発しており、
ご本人ではなく、ご家族が独自に相談にいらっしゃる場合が
多いためです。
このため、場合によってはご家族とご本人とでコンセンサスが
取れておらず、ご本人とお話した際に、実は家族信託をやる
つもりがなかった、ということをお話されることがあります。
この部分は、
「ご本人における問題ではあるが、
影響を受けるのはご家族である。」
といった、認知症、相続に関する問題の特徴が表れているともいえます。
このような原因で家族信託が進まないことがありますが、
家族信託自体は認知症、相続対策にとってなくてはならない
ツールになっています。
上記のような障害を少しでも取り除くべく、業務を進めて参りたいと
思う所存です。