今日はシニアの方向けに相続対策についてお話させて頂きました。
コーディネーターの方のご配慮で、「転ばぬ先の弁護士」とご紹介頂き、その後の話が非常に進めやすく感じました。
そこで改めて感じたのは、
「人に伝えるということは、翻訳能力だ。」
ということです。
私(荒木)は法律業務を専門業務としており、当然、相続法の仕組みを理解しています。
しかし、法律を勉強したことのない方の感覚が法律論とかけ離れているかというとそうではありません。
当たり前の感覚として、兄弟は平等に相続するべきである、とか、親の介護を頑張った人には多くの財産が引き継がれるべきである、といったような感覚をお持ちの方が大半です。
そのような方に対してお話するにあたっては、当たり前の感覚を前提とした上で、法律上の調整があるところや、実務上、手続が煩雑になってしまうところなどを、お聞きになる方の使っている言語で伝えることが大切であると考えています。
士業のやってしまいがちなこととして、体系立って話そうとする傾向があります。
すなわち、例えば遺言の話をするのであれば3種類の遺言の定義を述べ、そのメリットデメリットを比較して述べなければならないような感覚があります。
しかし、わかる方ならわかる話なのですが、秘密証書遺言は実務上、ほとんど使われておらず、お勧めするメリットもほとんどありません。
そうであるとすれば、自筆証書遺言と公正証書遺言の比較のポイントをさらっと述べれば足りる話になってきます。
これは何をやっているかというと、士業として学んだ知識を一旦、一般の方の言語に翻訳した上で聞き手の立場にたって編集し、聞き手のわかる言語で話すという作業を行っているわけです。
すなわち、ここで2回の翻訳作業を行っているわけです。
最初の翻訳作業がなければ法律論という文脈で話題を探ってしまいますし、後の翻訳作業がなければ法律用語を並べることでしか話せません。
このような翻訳作業ができるかどうかは、士業のみならずあらゆる職業において求められていることではないでしょうか。