東京におります。
昨日は、月1回の年間プログラムの日でした。
一昨日は、東京・神奈川で複数の学習塾を経営されている経営者の方と食事をご一緒させていただきました。
その中で出てきたのが、「価値提供とは何か。」という話です。
もちろん、私(荒木)は弁護士として専門的知識を差し上げる、裁判等の専門的分野の事案処理を行う、というところを本職としています。
しかし、「これが本当にそうなのか。」という部分について伺う余地があるという話になりました。
それというのも、実際に経営者として行っている業務が、お客様に対する価値提供とは距離感のあることも多くあるからです。
例えば、部下に対する指導を取ってみるにしても、生徒に対する教育方針の伝授や、教育の具体的な方法について教えることばかりではなく、集客のチラシの作り方だったりという部分も多くあるというのです。
かくいう私も、部下に対して指導を行う部分は、必ずしも法律的な部分ばかりではなく、結果的には表現のわかりやすさであったり、正確さであったり、礼儀としての正しさであったり、といった部分が中心になっています。
これはおそらく、どのような業種でも同じことが言えるかと思えるですが、経営者として差別化を図ろうとしているのは専門業務の部分である一方、実際に差別化が行われているのはそれ以外の領域であることが往々にしてあります。
私のイメージでは、専門領域で差別化されるのは2割、専門領域以外の部分で差別化されるのは8割程度なのではないかと思っています。
すなわち、弁護士でいうなれば、専門知識(例:ファイナンスのことを良く知っている。)や業務能力(例:訴訟の勝率が高い。)といったことではなく、広範な解決能力があることや、親身になって話を聞いてくれるといったことや、問い合わせに対するレスポンスが早いといったことが重視されているように思われます。
これは、専門的な業務を行うにあたって「そもそも」という言葉を何度か使ってみたらわかってくることなのではないでしょうか。
例えば、以下のようなことです。
クライアント「元従業員に対する損害賠償請求をしたい。」
弁護士「そもそも、なぜ損害賠償請求をしたいのですか?」
ク「元従業員が会社に対する迷惑をかけたことを償わせたい。」
弁「そもそも、なぜその元従業員は会社に迷惑をかけるようなことをしようと思ったと考えていますか?」
ク「成績が悪かったため、厳しく指導したことを恨んでいると思う。」
弁「そもそも、恨みを買うような指導を行うことについて問題はないでしょうか?」
ク「最初からできない人だったのでやむを得ないと思っていた。」
弁「そもそも、採用段階での選考基準はどうだったのでしょうか?」
ク「…、採用基準について再検討してみたい。」
私が受ける相談ではこのようなことがよくあります。
最初の質問では、「本件では損害賠償請求権が成立するか。訴訟をした場合に勝てるか。」といった趣旨ですが、最終的な着地点は採用の問題になっています。
この過程において法律的知識は一切使っていませんが、一定の解決は果たせており、これでクライアントは満足されているわけです。
しかし、このようなことは、少なくとも私の知っている弁護士業界では必ずしも当たり前のこととはなっていません。
いまだに弁護士は、専門的知見が重要であり、そこで差別化できると思われている方が多く見受けられます。
一定の分野で抜けた業績を上げたいと考えている方は多くいますが、専門業者であったとしても、専門以外の部分で評価が決まっているのではないか、ということに思いを致すことも必要なのではないでしょうか。