投稿日:2019年04月25日

【札幌 弁護士コラム】東札幌病院・石谷理事長に学ぶ:まずは話を聞いて、腹を触りなさい

昨日は顧問先の社長さんからご縁を頂いた、東札幌病院理事長の石谷邦彦先生と、その社長さんとの会食でした。
かれこれ1年ほど定期的に会食をさせて頂いております。

石谷先生は、御年74歳にしてバリバリの現役であり、今でも毎日の外来対応を行いながら病院経営に骨を折りつつ、世界五大(四大)医学雑誌の1つであるBritish Medical Journalの副編集長を務められているという超人的な方です。
病院は243床を有し、緩和ケアでは札幌随一、札幌のがん患者の方の2割を看取るほどの規模を誇っています。
石谷先生は医師になられて50年、東札幌病院を作られたのが私(荒木)が生まれたころとほぼ同時期というのですから、分野は違えどキャリアでは足元にも及びません。
それでいて毎年スキーの大会に出場し、夜は私より酒を飲まれるのですから、そのバイタリティには感服するよりありません(汗)。

<東札幌病院HP>
http://www.hsh.or.jp/

そんな石谷先生との会食は、毎度毎度、新しい気付きと背筋が伸びるような鋭い指摘を頂く場となっており、楽しみでならないイベントの1つとなっています。
今回も多くの気付きを頂いたのですが、最も印象的だったのが冒頭の言葉です。

「まずは話を聞いて、腹を触りなさい。」

これは、石谷先生が大切にされているという診察における技法の基本的なところだということです。
もちろん私は医療については素人ですが、多くの医師は、検査データや紹介状に書かれた内容を前提としてとらえ、その知識による先入観に基づいた診断をされるだそう。
もちろんこれは全面的に否定されるものではないのでしょうが、石谷先生によるともっと大切なものがある、というのです。

「対話とやさしさ」

これがキーワードです。

話を聞いて患者の主訴や治療に対する意向を理解し、腹を触ることによって自らの五感を用いて患者の状態を確認する。
「医学」は科学的に正確でなければならないのに対し、「医療」は人々の生活や文化の上に成り立っているものであることを意識しなければならない。
対話なくして医療は成り立たず、やさしさなくして医業は十全とはいえない。
そのようなことを石谷先生は仰いました(一部は私の要約です。)。

このことは弁護士業務においても全く同じことが言えるものだと思います。
例えば、離婚事件であれば財産の状況、家族構成、家族関係の変化などをまとめれば一定の事件処理ができますし、交通事故事件であれば事故態様、傷害の程度、仕事への影響などをまとめられば損害賠償額が半ば自動的に決められることになります。
しかし、本当にクライアントと接する価値は、そのような情報収集だけにあるのではありません。
クライアントの深いニーズに触れ、事件「処理」ではなくクライアントの深いニーズに沿った事件「解決」を図らなければならないはずです。

どれだけ忙しくとも、どれだけ多くのクライアントに関わる必要があろうとも、そのような根本的な考え方を忘れてはならない。

そのことを「まずは話を聞いて、腹を触りなさい。」との言葉を通じて改めて思い直した一日でした。