よくあるご相談の1つが、「訴えられたんですがどうしましょうか。」というものです。
これは一般的な形であれば無理からぬことであろうとお感じになるかもしれませんが、実は弁護士の立場からすると少し困ったご相談とも言えます。
もちろん、相談者の方は訴状等をご覧になったことがないでしょうし、裁判所の説明も難しすぎて何をしたら良いのかさっぱり理解できないという状況に置かれているのではないかとはお察しします。
ただ問題なのは、何を請求されているのか、今後どのような手続きが必要なのか、等のご説明を差し上げた後、それでもどうしたらいいのでしょうか、というご質問を頂くことです。
それというのも、まずはご本人がどのようにしたいのか、どのような決着を目指したいのか、という部分がなければ弁護士としての方針が決められないからです。
これは、実は訴訟だから、という問題よりも意思決定の基準の問題になっているのではないかと思われます。
法律的な知識はおくとしても、自分がどうしたいのか、自分の会社をどうしたいのか、将来どうありたいのか、といったことについては自らの基準で決定していただくよりありません。
そのような方向性を定めていただいた上で、弁護士としてできるのは可能な限りその方向に近づけるように証拠集め、主張を工夫し、和解がいいのか判決がいいのか考えるということだけです。
このようなプロセスはまさしく処理といったプロセスでしかありません。
そう言ってしまうと身も蓋もないようであり、弁護士に相談するといったこと自体がナンセンスなようにも思われてしまうかもしれません。
それはあながち間違った指摘ではない、と私は考えています。
それというのも、訴訟を起こされたという事象自体は、ある意味で結果でしかなく、結果に対する処理しかできない状況に追いやられてしまっているからです。
本来的に、弁護士をうまく使うとするのであれば、訴訟に至るような前の段階、すなわち訴訟の前の交渉段階や、それ以前に契約を締結する段階、さらにそれ以前に会社の業務設計を組み立てる段階といったあたりで、弁護士の法的知識を活用する必要があるものだと考えています。
訴訟のように裁量の範囲が狭まった段階ではなく、自由な意思決定ができるような裁量の広い段階で弁護士を使うことが実は弁護士の有効活用につながっているということをご理解いただければと考えています。