投稿日:2018年12月26日

【札幌 弁護士コラム】続・「項羽と劉邦」に学ぶ:口コミはネットの情報を超える

項羽と劉邦を読み終わりました。
ただ暇つぶしに読んでいるだけではなく、多くの気づきや学びがありました。
この物語の大きなテーマとしては、武勇に勝る項羽に対し、人徳に優れる劉邦がいかに追随していくかということがあります。
武力はこの時代において、何者にも勝る権威であり、それに対し人徳というものは目に見えて何かを変えるような力があるわけではありません。
しかし、結果としては劉邦が項羽を圧倒し、漢を建国するに至るわけです。
これもひとえに人徳の力であるという教訓はを含めたストーリーであると言えます。
このストーリーを少しミクロに見てみると、劉邦の人徳は単に劉邦の領地内だけではなく、劉邦が訪れたことのない土地にまで及んでいるという事実が挙げられています。
中国という非常に広大な国土において、今日のような通信技術は全くなく、もっぱら人の情報の交換は口コミによって成り立っていた時代です。
そのような時代において劉邦の人徳が各地まで行き渡っていたということは非常に驚くべきことではないでしょうか(もちろん元ネタである西漢演義による演出や、横山光輝によるデフォルメもあるかとは思いますが、全く事実と異なるとも思えません。)
これを現代社会に当てはめてみるとどうでしょうか。
現代社会においては通信技術は極めて発達しており、モバイルを持っている人であればどこにいても瞬時に情報を伝達することができるとともに、マスメディアが情報を発信すれば、一瞬にして日本各地に情報が伝播することになります。
しかし、例えば劉邦の人徳のような情報が簡単に広まるかと言うとそうではありません。
それは情報資源の奪い合い奪い合いが生じているということとともに、粗雑な情報が跋扈しているという事実もあるためです。
このような状況において、いかに情報や考え方を広めるか、という点において実はそのコミュニケーション手段ではなく、その内容や発信者自身の信頼性が問われています。
この点を抜きにしてコミュニケーション技術ばかりに頼りすぎる広告宣伝は、誰の目にも止まらない時代になっています。
コミュニケーション技術の発達した現代であるからこそ、口コミでも伝わる程度まで、その内容を精査し、いかに信頼性を高めるかということに腐心すべきではないでしょうか。