投稿日:2018年11月05日

【札幌 弁護士コラム】法務リスクの削減には、まずリスクホメオスタシスを知ることから

来年1月から勤務弁護士1名を入れることになり、その準備を進めています。
今日は机を搬入して事務所内の模様替えをしました。
これまでの事務所内のレイアウトを変えたので違和感がありますが、一方で事務所の陣容が充実してくる実感が湧きました。

さて、私が「訴訟嫌い、訴訟嫌い」と連呼していることで(笑)、法務リスクに敏感なお客様が多くいらっしゃるようになりました。
このような傾向に至ったことは非常に嬉しく思っていることです。

しかしながら、ビジネスにおいては当然、一定のリスクを取ることが必要とされます。
ファイナンスリスク、人事リスク、事故のリスク、信用リスク等、様々なリスクが伴うのは所与の前提です。
リスクを取る前提としてはリターンが見込めることがあるわけですが、リターンがあるとしてもリスクは削減していかなければなりません。

そうはいいながらも、ついつい利益を優先してしまうのがビジネスの常です。
そうなってしまうのは経営者に「リスクホメオスタシス」が働いているのが一つの原因であるといえます。

リスクホメオスタシスとは、危険を回避する手段・対策をとって安全性を高めても、人は安全になった分だけ利益を期待してより大胆な行動をとるようになるため、結果として危険が発生する確率は一定の範囲内に保たれるとする理論をいいます(デジタル大辞泉より引用。)。

すなわち、ビジネスにおいて経営者は利益を得られたら、その利益を守るべくリスクヘッジを行うものではなく、新たなリスクを取ってさらなる利益を求めようとします。
この結果、いくら事業規模が拡大しても結局はリスクの大きさは変わらないということが指摘されます。

もちろん、利益を拡大すべく拡大再生産を行うことは必要です。
しかし、リスクを削減しないのでは事業継続性は一向に伸びません。
このことは自明であるとも考えられますが、リスクヘッジが実現できないのはリスクホメオスタシスが意識されていないのが一因にあるように思われます。

自らのリスクに対する認識を一度棚卸しして、リスクに対してどのように考えているかを客観的に見つめる機会を設けるだけでリスクの削減は大きく進むのではないでしょうか。