投稿日:2018年10月14日

【札幌 弁護士コラム】過去と他人と裁判官は変えられない、じゃあ変えられるのは何か?

今日は恒例の滝行でした。
いつもそうですが俗世にまみれた感覚が現れるような気がします。
これで今月も頑張っていけそうな気配が漂います。

さてよく言う言葉ですが、「 過去と他人は変えられない」 という言葉があります。
これは裏を返せば「 自分と未来は変えられる」 ということを含意しています。
つまり過去は過ぎ去ったものですので今からは変更のしようがない、 ということと、 他人は自分のコントロールが及ばないから変えようがない、 ということを述べています。

しかし裁判になった場合にはもうひとつの条件を加える必要があります。
それは「裁判官は変えられない」ということです。
もちろん個々に 合う合わないという裁判官個人の問題もあります。
しかし基本的には裁判官は均質な判断をされるとしており、 基本的な発想としては過去の判例に従った判断をしますし、 事実認定の問題についても基本的には上級裁判所が判断するであろう内容を踏襲するとされています。

このような前提条件に断った場合、 訴訟に対しては以下に取り組んでいけばいいかという考察が必要になります。
そうするとまず、 訴訟とは過去を振り返る作業である以上、訴訟が提起された後にはその事実関係を変えることはできません。
すなわち新しい材料を訴訟が提起されてから作り出すことはできないということです。
また相手方は自らの利益とは対立する立場である以上、自分の思うようにコントロールすることは不可能です。
さらに裁判官個人の問題も含めて裁判官の判断基準を変えていくということもまたできません。

そう考えてみると訴訟が起こってからできることというのは非常に限定的であることがわかります。
訴訟が起こった段階から遡ってみていくとすると、 訴訟の前の交渉の段階では裁判官は関与していないため「裁判官は変えられない」という命題に逆らう必要はなくなります。
次に「他人は変えられない」という命題に対しては、相手方が存在する以上は、相手方の考え方は変えられないということですが、相手方が発生しない段階、すなわち法的問題に至っていないという段階においては相手方が発生することを予防することはできます。
さらに過去は変えられないということに関して言うと、 過去に法的問題が発生するような行動をとっていなければ過去を変える必要はないということになります。

いずれにしても訴訟が起こってから 制約条件の多い中で問題の解決を図ることは困難であり、 それ以前に未来を予見して予防策を取っておくということは比較的容易であると言えます。
訴訟に至ってからいかに頑張るか、 と考える方も多いとは思いますが、 これだけ制約条件の多い中でできることは非常に限定的です。
それよりも簡単に、法的問題を起こさないことを重視して、そのことに思いを巡らせることの方がよほど有益であると言えるのではないでしょうか。

具体的には 契約書をきちんと整備する、 社内規定をきちんと整備する、 法的に問題になりうる行為を行う場合に事前にリーガルチェックを依頼する、 などといった行動が考えられます。
制約条件の多い訴訟で揉めるのと、 何も制約条件のない中で弁護士を使って予防するのと、 どちらが 適切な行動であるかは容易に判断が可能かと思われます。