今日は大学の OB 会でした。
毎月開催されているものですが、今回は少人数で膝を突き合わせての中身の濃い語り合いとなりました。
今回の参加者は大先輩ばかりで、歳の近い OB がいないどころか、平成卒の先輩もいないという かなりの世代間ギャップのある会となりました(笑)。
そこで新聞紙上で報道されているコープさっぽろの北海道電力に対する損害賠償請求について話題に上がりました。
この件については新たな報道でコープさっぽろが損害賠償請求を取りやめた旨が報じられています。
しかし、北海道電力に対する損害賠償請求の可能性を示唆したことは、今後の震災処理に大きな影響を与えるものと思われます。
一方で、貴ノ岩が日馬富士に対して損害賠償請求訴訟を提起する旨が報道されています。
この事件も世間の耳目を集め今後の展開が注目されています。
この二つの件については、全く関係性のない事件のように思われます。
もちろん社会的事実としては全く関連性がなく、 仮に両者が訴訟になったとしても全く別事件として扱われますし、 結論における関連性もありません。
しかし法律の専門家から見ると2つの事件は共通の争点が見えるものになっています。
この2つの事件に共通の争点とは「因果関係」の問題です。
因果関係とは、この場合、損害を与えた者の行動が損害を受けた者の損害の発生についてどの程度の関連性を持っているかというものです。
訴訟になった場合には、この因果関係が認められる範囲において損害の賠償が命じられることになります。
上記の2つの事件に関してはもちろんそれ以外の論点も生じ得るでしょうが、 損害賠償の額の認定においては因果関係をどこまで認めるかが非常に大きな争点になるものと予想されました。
すなわち、コープさっぽろの事件においては、北海道電力が停電を起こしたこととコープさっぽろが 保存していた食料品の損失との関係においてどの程度の関連性があったのかその範囲が問題となるものと考えられました。
また日馬富士事件においては、日馬富士の暴行行為と貴ノ岩が受けたとされる損失のうち、 懸賞金に関する逸失利益や慰謝料との関連性がどの程度認められるかが争点になるものと考えられます。
この2つの事件に関わらず、損害賠償請求が争点になっている事件においては、どの範囲で因果関係が認められるかというのが大きな問題になることが多々あります。
因果関係が認められる範囲というのは法律上も明確な規定がなく、一般論としてなかなか理解が難しいところではありますが、一般的に論じられてることとしては「あれなければこれなし」という条件関係に加え、行為と損害との間に「社会通念上相当といえる関連性」が認められることが必要とされています。
報道だけを見ていると、例えば日馬富士事件ではかたや2,500万円前後の損害賠償請求を行い、かたや50万円程度の賠償の準備がある旨を述べていて、常識的に見るとどちらかがあまりにもおかしいことを述べているように見えますが、因果関係の認定によって大きく金額が変わることが予想され、その意味においてはどちらにも振れる可能性はあるといえます。
この幅が小さければ交渉段階で和解がまとまることもありますが、これほどまでに開きが大きいと裁判所に持ち込み、裁判官が因果関係をどこまで認めるかというところを見る必要が出てきます。
これが交渉が決裂に終わり訴訟に持ち込まれる典型的なパターンといえます。
このように見てみると、因果関係がどこまで認められるかという問題は、法律の専門家においても非常に難しい問題であるということがご理解いただけると思います。
損害賠償請求事件というのは、報道に上ることも多いと思われますが、単に金額の大小だけで見るのではなく、こういった因果関係があるかどうかという視点で見てみると事件の真相が少し見えてくるかもしれません。