投稿日:2018年06月28日

【札幌 弁護士コラム】どっちがいいの?長い契約書?短い契約書?

札幌もここのところようやく暑くなってきました。
いいのかどうなのかわかりませんが、今日は本州並みに蒸し暑いような感じ委になってきました(本州に比べたら全然平気ですが。)。

さて、私はご案内のとおり、昔は大手法律事務所と呼ばれるところに所属していました。
クライアントは大手企業で、契約書ばかり作っていたので100頁や200頁の契約書というのもざらに見る機会がありました。

一方で札幌に移籍してきてからというもの、こちらで使われている(地元企業同士の)契約書というとせいぜい5、6頁がいいところ。
それではこの長さの違いは一体何なのだ、という話になります。

もちろん、契約の内容による話ですので一概にはいえない部分はありますが、やはり最も大きいのは取引の複雑さの違いです。
契約当事者の数、契約で規定している取引の工数、取引にあたっての担保の取り方、等取引内容によって大きく変わります。

一方で、仮に同じ取引をするにあたって契約書を作るにしても、その長さが大きく変わるということがあります。
それが「どこまでリスクとして考えるのか」という点です。

契約書は、「契約自由の原則」に基づいて当事者間で自由に決めていいものであり、公序良俗に反するような場合以外には有効なものとなります。
一方で契約において明確に定められていないことについては、民法その他の法令によってその法的な効果が決定されることになります。
このため、取引の内容を1から10まで完全に決めずとも契約としては十分であり、契約によって決めていない部分については民法等に委ねるというやり方もあります。

このため、契約書は長ければいいというものではなく、却って短ければいいというものではありません。
最も大切なことは、契約書に定められた取引内容を契約当事者が十分に把握しており、その取引におけるリスクを十分に回避できているかどうかという点にあります。
この意味でいうと単純な取引にもかかわらずやたらと長い契約書は無意味ですし、契約内容が複雑であったり、リスクが多い取引であったりするにもかかわらず必要なことが規定されていない契約書はいざというときに役に立たないことになります。
この意味で、契約書にどこまでの範囲を規定するか、ということはこれまでの前例踏襲で決まるようなものでなく、取引の個別性を踏まえて個々に検討していく必要があるといえます。