事業者がクライアントに対して提供すべき価値、というものについて考えることが多くあります。
その中には、私自身が自分の事務所かいかなる価値を提供できているのかという部分もありますし、お客様の会社がそのクライアントに対して提供する価値に私自身がどのようにかかわれているかという部分もあります。
自らが相手に対して提供できる価値というのは、実は様々であり、提供している側が気付いていないようなことも多く見受けられるものです。
卑近な例で言えば、喫茶店なんかは典型例であるといえます。
喫茶店は当然、飲食店ですから提供する食べ物、飲み物の味というのはわかりやすい価値ですが、それ以上に居心地が良かったり、一緒に来た人との会話が弾むような仕掛けがあったりすることも価値にあたります。
私などは受験勉強中はよく喫茶店で勉強していたものですが、そのような人にとっては勉強がしやすいというのも喫茶店の価値であったりします(店によっては追い出されてしまうところもありましたが…。)。
このようなことは、特にBtoCの業務を行っている企業で接客を重視していることにも表れています。
一方で、事業者側から提供しようとしている価値と、クライアント側が求めている価値とのギャップが大きい業界もいまだにたくさんあるように思います。
これも卑近な例ですが、私はバス業界がこの典型例だと思っています。
私は冬季期間中はバス通勤をしているのですが、始発の場所から乗る以外のとき、うまくバスを利用できたためしがありません。
それというのも、始発以外の停留所で時刻表通りにバスが来るということはめったになく、氷点下の中でバスを待つということが苦痛で仕方ないためです。
利用者としては遅れるのはやむを得ないとしても、停留所で待たずに乗れるというのが大きな価値になっているということです。
この価値提供をすることはアプリを開発するなどすれば、それほど難しいこととは思えませんが、いまだにそのような仕組みが整備される気配がありません。
弁護士業界も実はそのような傾向が強いものと思っています。
上場企業等の高度なコンプライアンスが求められているような企業を除けば、多くの場合、弁護士に求めるのは「現実味があり、ポイントを外していない、大掴みの判断や対応を、迅速に」やってほしいというニーズではないかと思います。
仮にこれが正しいとすれば、弁護士はこのような価値を提供するための準備を行わなければなりませんが、それがマッチしているものとはあまり考えられません。
一方で弁護士を利用しない理由として多く上がってくるのは「ハードルが高い」という意見です。
これも弁護士が「相談しやすい、話しかけやすい、アクセスしやすい」といった価値提供を行ってこなかったからであるが故の意見ではないかと考えられます。
事業を行っている者すべてが価値提供に関してより敏感になるべきではないかと考える今日この頃です。