投稿日:2018年03月15日

【札幌 弁護士コラム】こいつはヤバい!絶対に注意しなければならない契約書の条項5選

私は契約書の作成やチェックを専門業務の1つとして取り扱ってきましたが、「これはヤバい!」すなわち、後々のトラブルの原因になるといった条項にはいくつかの類型があると感じています。

今日はそれをいくつかご紹介したいと思います。

 

(1)一方的な契約条件の変更が可能になる条項

具体的な契約条件(代金額、商品内容等)について、契約書に盛り込んでおかず、契約上の立場の上の者(元請業者等)が立場の下の者(下請会社等)に対して、通知することのみをもって契約条件を変えることができるとする条項があります。

すなわち、立場の下の者が具体的な条件について同意していなくとも契約条件が変更されるのであり、極論すればこれまで1万円だった契約がある日から突然1円に変えられてしまうおそれもあります。

 

例えば「手数料その他の取引条件は別紙条件表によるものとする。」「甲は乙に対し、通知することにより条件表を改定することができるものとする。」といったような条項です。

 

このように通知のみによって契約条件が変更されるものは下の立場の者からすると大変危険な条項であるといえます。

 

(2)法外な違約金が規定されている条項

何かしらの契約違反があった場合に、違約金を定めている場合があります。

違約金とは、契約違反に対する制裁を与えることによって相手方に契約を守るよう強制しようとするものですが、それがあからさまに法外な金額が設定されている場合があります。

 

例えば「甲が乙から得た顧客情報を流出させた場合、甲は乙に対し1人あたり違約金として100万円を支払うものとする。」といったような条項です。

 

顧客情報の流出には様々なレベルがありますが、BtoCで事業を行っている事業者で顧客情報を流出させてしまった場合には500円から1000円程度の商品券などで解決されるケースが多く見受けられます。

その観点からすると、(もちろん顧客情報を流出させることはやってならないですが)「100万円」といったものはかなり高額であるといえます。

 

このような規定は、場合によっては「暴利行為」として公序良俗違反として無効となりますが、相当に程度がひどいものに限られますので注意が必要です。

 

(3)契約をやめさせてくれない条項

契約の拘束期間が長い契約も注意が必要です。

例えば、より安くやってくれる業者が出てきているにも関わらずそちらに変えられないという問題が出てきたり、社内の実情に合わない状況になったために使わなくなったサービスに料金を払い続けなければならなかったりする等の弊害が出てくるからです。

この典型例が携帯電話やインターネット接続サービス等の通信系の契約で、契約を辞めようとすると違約金が発生します。

 

例えば「甲が、本サービス開始後2年以内に本契約を解約する場合には、乙に対し違約金として●万円を支払うものとする。」といったような条項です。

 

また、契約の内容自体ではなく法律で契約の解消が自由に認められない類型として、労働契約と賃貸借契約があります。

これらの類型は、労働者や賃借人の地位が不安定にならないようにするという政策的な理由によって、使用者や賃貸人が契約を解消できる場合を限定しています。

(実態上、必ずしも労働者や賃借人の地位が弱いとも言えないケースもありますが。)

 

(4)自力救済ができるとしている条項

「自力救済」(じりききゅうさい)とは、一般人が契約内容を強制的に実現しようと他人の財産を没収したり、撤去したりすることです。

契約内容の強制的な実現を行うことは全て国家権力に委ねなければならないことになっていますが、これに反して一般人が行えるものとしているのが自力救済の条項です。

 

例えば「甲が、本賃貸借契約終了後も本件貸室から退去せず、又は所有物を残置させている場合には、乙は甲の承諾がなくとも甲の本件貸室内の残置物を処分することができる。」といったものです。

 

この条項に基づいて乙が甲の所有物を無断で処分した場合には自力救済にあたり、完全な違法行為となります。

場合によっては乙が住居侵入や器物損壊といった刑法犯に問われることもあります。

また、このことに弁護士がゴーサインを出したとしたら弁護士が懲戒処分を受けるような話になります。

 

(5)知的財産権の帰属を定める条項

アーティストがプロダクションやイベント主催者などと結ぶ契約などにおいて結ぶ契約においては著作権の帰属が規定されていることがあります。

また、研究開発に関する業務委託契約においては、特許権の帰属に関する規定がなされていることがあります。

 

例えば「甲が本イベントにおいて創作、発表した作品に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に規定される権利を含む。)は全て乙に帰属するものとする。」等と規定される場合があります。

 

このような規定がある場合、創作したアーティストは創作物に関する著作権を失うばかりでなく、別のところで発表しようとする場合には契約相手の承諾を得なければならないことになってしまいます。

あまり目立たない規定のようにも思われますが、創作活動や研究活動を行う人からすると致命的な条項になる場合もあるので十分な留意が必要です。