家族信託のご相談を受ける中で、「家族信託を進めるべきか、否か」という点において迷われる方が少なからずいらっしゃいます。
今回は、そのような中で何が家族信託を進めるきっかけになり、何が家族信託を断念する(見送る)きっかけになったのか、少しご紹介したいと思います。
(1)ご本人の判断能力の問題
ご本人(委託者)が認知症等により家族信託を進めるに足りる十分な判断能力があるかどうかが問題になることがあります。
これは「家族信託を進めるべきかどうか」というよりも「家族信託を進められるかどうか」という問題です。
すなわち、家族信託は委託者と受託者との間で契約をすることによって進めるものですが、この契約をするためには一定の判断能力(=意思能力)が必要です。
このため、ご本人に判断能力がないと認められる場合にはいくら希望が強くとも家族信託を進めることはできません。
(2)家族信託に対する理解
家族信託は比較的新しい制度であるがゆえに、一般の方(業者の方についてもですが)にはあまり理解が広まっていません。
このため、十分に理解が至っていない方は、本来的な必要性が認められる場合であっても何となく「まだいいかな…。」と対策を進めることを躊躇してしまいます。
実はこれこそが我々の一番訴及したいポイントなのですが、ご本人又はご家族が家族信託の必要性に気付いているということは相続、資産承継に何らかの問題を認知しているということが明らかになっているわけです。
それにもかかわらず、何らの対策を行わないままに放置することはいずれ問題につながっていくことが明らかです。
このような方には今一度、家族信託がどのような効用を発揮するのかをお知り頂きたいと思います。
(3)いい専門家と巡り合えない
家族信託は比較的新しい制度なのですが、これは一般の方に知識が広まっていないだけではなく、専門家サイドとしてもまだまだ受け入れ態勢はできていません。
弁護士にしても、司法書士にしても、税理士にしても、行政書士にしても、どこもが家族信託に対応してくれるわけではありません。
ただ、対応してくれないよりも、十分な知識もないのに安請け合いして対応するような士業のほうが実は問題です。
家族信託が未成熟な法分野であるため、正直なところ、ひどい処理をする業者も多々存在するように思います。
依頼される側としてはその業者の実績や質問に対する回答などによって依頼を検討したほうがいいという場合も存在します。
(4)経済面の負担が大きい
家族信託の設定に当たっては数十万から数百万程度の費用が必要となる場合があります。
通常は委託者となるご高齢の方の財布から出されることが多いのですが、そうでないケースについてはお子様ら、ご家族の負担にもなる場合もあります。
額面上は家族信託の費用は高く見える場合もありますが、遺産分割協議で揉めるリスク、
認知症で不動産等の売却ができなくリスク、そのようなリスクが顕在化した場合には到底、家族信託の費用では間に合わないくらいの損害が発生します。
確かにトラブルが発生する確率は明確にわかりませんが、経済面としては家族信託を設定したほうがいい結果となる可能性があります。
以上のように家族信託が途中で頓挫するケースは多くあります。
本当に家族信託が必要かどうかについては今しばらく慎重に検討したほうがいいのではないのでしょうか。
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