士業やコンサルタントといった職業の方は、どの方も同じ悩みに突き当たったことがあるのではないかと思います。
それというのが「アドバイスした顧客に結果がともなわなかったらどうしよう。」ということです。
そこで重要になる1つの考え方が「委任」と「請負」の違いを意識することです。
この問題の根本はといえば、士業やコンサルタントが「どのような仕事を依頼されているのか」ということです。
実はこの点は優れて契約上の問題、すなわち法律問題なのです。
もちろん実際の契約の際、互いに契約書とにらめっこしてああでもない、こうでもないと議論をしてまで仕事の中身を詰めることはないでしょうが、きちんと業務範囲を決めておくことは非常に重要です。
ここで基本となるのが仕事が「委任」(又は「準委任」)なのか「請負」なのか、ということです。
「委任」とは、一定の(法律上の)行為を委託することです。
(ちなみに法律上の行為でないものは「準委任」といいます。)
委任においては、仕事を受ける側が行為をすることに対して報酬が支払われることとなります。
委任の場合には結果がどうなるか、という点については仕事を受けるほうは責任を負いません。
一方、「請負」とは、仕事の完成を約束することで成立します。
このため、仕事を受ける側は、仕事が完成することに責任を持つことになり、仕事が完成しなければ報酬を受け取ることができません。
このような違いを意識すると、士業やコンサルタントは委任(又は準委任)契約によって仕事をしているのであり、仕事の完成(=顧客の成果の発生)まで約束しているものではないことがわかります。
ただ、このように言うと一見、「士業やコンサルタントは何て無責任な仕事をしているんだ!」と思われるかもしれません。
そうなんです。
その通りなんです。
…というと石を投げられそうですね(笑)。
しかし、考えてみると士業やコンサルタントの多くは1から何かを作り上げるのが仕事ではなく、何らかの問題のある前提事実があったり、経営に問題を抱える会社があったり、個人的な悩みを抱える人がいたり、といった状況を前提として仕事を始めるのが通常です。
そうであるとすれば、士業やコンサルタントは、そのような前提の状況にまで責任を持とうとすべきではないですし、責任など持てるはずがありません。
この点を誤って、「いい弁護士に頼んだら何とかしてくれるはずだ。」といったように依頼される方もいらっしゃいますし、士業やコンサルタントの方でも「それならできますよ。」と仕事の完成まで安請け合いしてしまうようなこともあります。
このような誤った認識が広まってしまうと、士業やコンサルタントの仕事に無理が生じてしまい、クレームにつながったり、不当な業務処理がなされてしまったりする温床となってしまうのではないかと思います。
私は、士業やコンサルタントの最初の仕事は、所与の状況を整理して顧客にきちんと説明することで認識をそろえることではないかと思っています。
共通認識を作った上で、できること、できないこと、よくわからないことを切り分けて進め方を協議していくのが本来的なやり方だと考えられます。
もちろん一旦やると決めたらその後は全力投球で案件に取り組むのが士業やコンサルタントの義務であることは言うまでもありません。
このように「委任」と「請負」の違いを意識することで、顧客と士業やコンサルタントの意思疎通がスムーズになり、いい仕事につながっていくのではないでしょうか。