投稿日:2017年07月12日

【札幌 弁護士コラム】訴訟における「経済的利益」とは

今日も朝から作業の日でした。

それほど暇をしているわけではないのですが、なぜかここ1週間は外出や来客がほとんどないという不思議な週になっています。

札幌が暑すぎるからでしょうか。

 

さて、今日は弁護士報酬に関して「経済的利益って何?」というご質問を頂きました。

改めて考えてみるとこれは意外と難しい概念です。

 

弁護士会の旧報酬基準規定を見てみると以下のような記述になっていました。

 

>旧報酬基準規定

① 特に定めのない限り,着手金は事件等の対象の経済的利益の額を,報酬金は委任事務処理によ り確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定する。

 

算定可能な場合の算定基準

イ 金銭債権 債権総額(利息及び遅延損害金を含む)

ロ 将来の債権 債権総額から中間利息を控除した額

ハ 継続的給付債権 債権総額の 10 分の 7 の額。ただし,期間不定のものは,7 年分の額

ニ 賃料増減額請求事件 増減額分の 7 年分の額

ホ 所有権 対象たる物の時価相当額

へ 占有権,地上権,永小作権,賃貸権及び使用借権 対象たる物の時価の 2 分の 1 の額。ただ し,権利の時価がその時価を超えるときは,権利の時価相当額

ト 建物についての所有権に関する事件 建物の時価相当額に敷地の時価の3分の1の額を加算 した額 建物についての占有権・賃借権及び使用借権に関する事件 へにその敷地の時価の 3 分の 1 の額を加算した額

チ 地役権 承役地の時価の 2 分の 1 の額

リ 担保権 被担保債権額。ただし,担保物の時価が債権額に達しないときは,担保物の時価相 当額

ヌ 不動産についての所有権,地上権,永小作権,地役権,賃借権及び担保権等の登記手続請求 事件 ホ,ヘ,チ及びリに準じた額

ル 詐害行為取消請求事件 取消請求債権額。ただし,取り消される法律行為の目的の価額が債 権額に達しないときは,法律行為の目的の価額

オ 共有物分割請求事件 対象となる特分の時価の 3 分の 1 の額。ただし,分割の対象となる財 産の範囲又は特分に争いがある部分については,対象となる財産の範囲又は特分の額

ワ 遺産分割請求事件 対象となる相続分の時価相当額。ただし,分割に対象となる財産の範囲 又は相続分についての争いのない部分については,相続分の時価の 3 分の 1 の額

カ 遺留分減殺請求事件 対象となる遺留分の時価相当額

ヨ 金銭債権についての民亊執行事件 請求債権額。ただし,執行対象物件の時価相当額(担保 権設定,仮差押等の負担があるときは,その負担を斟酌した時価相当額) 算定不能な場合の算定基準 800 万円とする。ただし,事件等の難易,軽重,手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮 して増減額することができる。 経済的利益の額と紛争の実態又は依頼者の受ける額とに齟齬があるときは増減額しなければ ならない。

 

むむむ…。

単純な金銭請求のようなところは感覚的によくわかっているのですが、不動産等の評価が必要なものや、担保権が絡むものなどは何も見ないで説明するのはかなり大変そうです。

まぁその意味で「経済的利益」という文言があいまいなことは否めないように思います。

 

もう一つ、経済的利益というものが一般の方になじまないのは、通常の感覚と弁護士報酬基準における経済的利益に齟齬があることです。

例えば、金銭債権(例えば他人に300万円を貸しているような場合には300万円の金銭債権があるということになります。)の場合、どんな相手であろうと、いつ貸したものであろうと、その金銭債権の金額自体が経済的利益となります。

そうだとすると、いくら還ってくるかわからない(というかほとんど見込みのない)ものであっても額面通りの金額を基準とされるということになります。

そのような場合に依頼するべきかどうかという問題はあるにしても、何だか高すぎるのでは、という感覚に陥ってしまうでしょう。

 

そのあたりについては少し合理的な決め方ができればよいのでしょうが、「そんなもんだ」という考え方が定着している部分もあり、なかなか現状を変えることは難しいような気もします。

そのあたりのところをうまくやっている事務所があれば勉強させて頂きたいものです。