投稿日:2017年06月27日

【札幌 弁護士コラム】収益不動産を家族信託する際の細かな留意点

今日はとある案件の家族信託の実行の日でした。
今回の対象は金銭と貸家の案件でした。
貸家やアパート・マンション等の収益不動産を家族信託の信託財産とする場合にはいくつか細かい点で留意すべきことがあります。
①敷金の引き継ぎ
家族信託を設定する場合、不動産の所有権はその時点で受託者に移り、借主との間では当然に賃貸借契約における賃貸人となります。
元の不動産オーナーが敷金を受領していた場合、賃貸人の地位が移転する関係上、敷金も新たな賃貸人となる受託者に引き継がれることになります。
このため信託設定の時点での敷金を計算し、受託者名義の信託口口座に移すことが必要となります。
②火災保険の名義変更
受託者が所有者となる以上、建物についての火災保険も所有者である受託者が名義人になることになります。
この名義変更の手続自体はさほど難しいものではなく、保険会社に連絡すればほどなくして変更の手続きを行ってくれます。
③固定資産税の支払い
受託者が所有者になるため、翌年以降の固定資産税納税通知書は受託者宛に送付されることとなります。
信託を設定した年度については、契約上、誰が支払うかを決めておく場合もありますが、信託を設定した日の前後で日割りとして、前を元の不動産オーナー、後を受託者が支払うとすることがあります。
但し、家族信託で受益権を譲渡するものではない場合、委託者が受益者となり、受益者が信託の費用を拠出することが通常であることから、経済的にはどちらが支払っても大きな違いは生じません。
④賃借人に対する通知
不動産の所有権が移転すると、当然に賃貸人の地位も移転しますが、そのことは賃借人に通知を行っておく必要があります。
これは賃料の振込先口座が変わるという実務上の問題が一番大きいのですが、賃借人の心情的にも所有者が変わったらきちんと伝えてほしいという、安心感の問題も含まれます。
賃借人の理解を得ることも賃貸経営の引き継ぎにおいては重要なことではないでしょうか。