投稿日:2017年04月24日

【札幌 弁護士コラム】炎の七番勝負 藤井ー羽生戦に思うプロフェッショナルの姿

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今日はAbemaTV主催のイベント「藤井聡太四段 炎の七番勝負」の第7局、藤井-羽生戦を観ていました。

https://abema.tv/channels/shogi/slots/8yYREo8Yt4eYej

 

(以下、将棋に関するかなりマニアックな話になります(笑)。あとネタバレ注意です。)

この企画は、昨年、史上最年少(14歳2か月)で将棋のプロ棋士になった藤井聡太四段が若手実力者から、トッププロまで7人の棋士と対戦するという企画です。

藤井は昨年プロになってから現在に至るまで公式戦無敗の13連勝中という、怪物じみた戦績を収めてはいるものの、まだプロになって半年ほどといった意味で経験が浅く、公式戦でのトッププロとの対戦はない状況です。

その藤井を一足飛びにトッププロにぶつけてみたらどうなるだろうというのがこの企画です。

 

当初、七番勝負のうち、半分も勝てないのではないかというのがもっぱらの下馬評でしたが(というよりも普通のデビューしたての四段であれば1勝もできなくてあたり前です。)、第6局まで何と5勝1敗という成績で最終局を迎えることになりました。

最終局の相手は、将棋を知らない人でもまず知っているであろう、将棋界のトップを20年間守り続けている羽生善治三冠でした。

 

七番勝負が始まる前であれば「藤井が全くかなわないだろう。」という予想が大半であったでしょうが、これまでの戦績を見るとそうも断定できないくらい勝敗予想が拮抗してきている状況でした。

対極開始後、序盤から中盤にかけて藤井がこれまでの勢いそのままに羽生陣に対して攻勢をかけ、優勢な局面を築いていきました。

そしてついには終盤に入って藤井の勝勢(圧倒的優勢)の局面となりました。

 

この段に至っては解説を担当していたトッププロ2人も「もう間違えようがないですね。」と藤井の勝利を確認し、検討をやめてしまいました。

そのような場面で、羽生が指した手が△6九金。

藤井も解説者も全く予想していない手でした。

この手を境にして局面は一気にきわどい状況となりました。

しかし、それまでのリードが大きく、ギリギリ(歩1枚のところで)藤井が何とか逃げ切りました。

 

1局の将棋の話で大変マニアックになって恐縮なのですが、ここで着目すべきことは2つあるように思います。

 

1つは、人が普通に見ているものは、見えているほど単純にできていないということです。

△6九金の前の局面は、プロが見れば100人が100人、羽生が敗勢の局面だったでしょう。

しかし、実際には極めてきわどい局面まで追い込まれる余地があったのであり、そこまでを予想できたプロはほぼいなかったでしょう。

そのようにプロのレベルでも突き詰めて考えなければわからない世界があるということであり(プロが突き詰めて考えてもわからなかったかもしれないのであり)、物事は思われているほど単純ではないということを意識する必要があるでしょう。

 

もう1つは、なぜ羽生が△6九金という手を指せたかということです。

これはひと昔前に「羽生マジック」という言葉がはやった時代がありましたが、まさにそのような類の手であると思います。

解説者は藤井の勝ちで結論を出し、視聴者はそれを信じて終局を待ち、相手の藤井もほぼ勝ちを確信していたであろう中、羽生だけは何とか勝てる道筋を、何とかきわどい勝負になる手を考慮時間目いっぱいまで必死に考え続けていました。

これがまさしく「羽生マジック」の正体です。

このようなことはどの世界にも通じることですが、本当の才能とは、どれだけ苦しくても、どれだけ追い込まれていても、どれだけ絶望的な場面であっても死力を尽くしきる力であるといえます。

 

結果、今回の対局では敗れてしまった羽生でしたが、私(荒木)は△6九金という手に羽生のこれまでの棋士人生を総集したプロフェッショナルの姿を見た気がしました。