(本記事は平成29年2月26日分の未投稿記事です。)
海外出張中にルーブル美術館にも立ち寄りました。
モナリザ、ミロのヴィーナス、ニケ像等歴史や美術の教科書で見たことのある作品に間近で触れることができ、感動もひとしおでした。
そのような中で法律家として見ておきたかったのがハンムラビ法典でした。
ハンムラビ法典とはバビロンの王であったハンムラビ王が作った法典で、2メートルあまりの石柱にびっしりと条文が彫刻されている石碑です。
解説によると、憲法のような政治に関する部分から始まり、民事、刑事にわたるあらゆる条文が記載されているということでしたが、特に多くの条項にわたるのが家族法であるそうです。
「姦通をした妻は水に投げ込まれる。」など、家族を大切にしない者は国家から処罰を受ける趣旨の条項が多く含まれているようでした。
また、このような石碑を作った理由としては、ハンムラビ王の権威を示すことも一つにあったようですが、民衆に法律を流布させる意味もあったものとされています。
後者の理由は実は古代では画期的なものであったのではないかと考えられます。
というのも、前者の理由で作製された建造物や工芸品などは数多くあり、権威によって民衆を制圧するということはどこの国でも行われてきたことですが、後者の理由のように民衆に対する秩序を与え、公平な法的扱いを行おうとしてきた例はさほど多くないように思われます(実際の法の執行がどこまで公平であったかはよくわからないところはありますが。)。
法文を民衆に公開するようになったのは実はさほど古い話ではないとされています。
というのも為政者にとっては民衆に法律を明らかにしないことにより、恣意的な法律の運用が可能になるとともに、民衆が為政者に対して法律がどうなっているのかというお伺いを立てるようになるため、権威が増すという効果があったためです。
これは現代における軍事政権においても同様のことが行われている例があります。
例えば聞いた話によると、最近になってある東南アジアの国の民法を整備しようということで日本の弁護士が協力を行うようになったところ、現状の法律を調べようと思ってもどこにも法文が見つからないという事態があったそうです。
結局、必死に探し回ったところ、古本屋で1900年代初頭のイギリスの条文が見つかり、どうもそれが現行の法律であるということになったそうです。
このように古いものに触れてみると、現代における考え方自体は古くから存在するということに気付かされるとともに、歴史は何度も繰り返されることに気付かされます。
現代において当然と思われていることも数百年後には覆されているということも多く存在するわけで、未来を見据えるために歴史を学ぶということは必須なのではないでしょうか。