投稿日:2017年03月07日

【札幌 弁護士コラム】操作主義と人を動かすことの違い

(本記事は平成29年2月21日分の未投稿記事です。)

世の中には簡単なノウハウを謳って顧客を吸引しようという手法が多く存在します。

「たった○○日間××をするだけでこんな体に!」とか「あなたも明日からできる成約率○○%アップの営業術」とかそういった類の書籍などがこれにあたります。

しかし私(荒木)はある時からこういったものに疑問が生まれるようになってきました。

それはこれらのキャッチーなコピーで売ろうとするのは「操作主義」に基づくものであるため、背後に大きなリスクが存在するのではないかと思うようになったからです。

 

操作主義とは、他者を思いのままに動かすことができるという前提に立ち、他者を操作しようとする考え方です。

昔からの言い方でいうと「人を踊らせる」ということが近いかもしれません。

この操作主義に基づくと、他者の思考にバイアスをかけさせ、説得することにより他者を動かす手法を紡ぎ出すことになりますが、それがエスカレートしてくると他者を騙し、脅し、おだてることによって他者の意思を支配するということになります。

この手法がなぜ問題であるかというと、端的にいえば他者の自由を奪っているにもかかわらず、動かそうとする者にその自覚がないからです。

このため動かされた者が動かされていたことに気づくと不快、不満に思い、トラブルに発展することになります。

 

もちろん広告を行うこと一般がすべて悪であるというつもりは毛頭ありませんが(このコラムも広告である側面は否定できませんし…)、「いい商品、サービスを作り、それを人に知ってもらう」というビジネスの基礎から大きく外れてまで他者(顧客)を動かそうとすることは好ましくないものです。

 

一方、操作主義の対極にある一つの事例として、私の妻の親戚がやっている居酒屋の例があります。

その居酒屋は池袋駅付近にあるのですが、大将と女将さんのご夫婦だけで30年以上もやってきたカウンターと小さな小上がりがあるだけの店です。

大将の話によるとその界隈で30年続いている店はそこだけとのこと。

一見さんは完全にお断りで、一切広告はしておらず、SNS全盛の現在においても食べログやぐるなびなどのサイトでもほぼ情報が掲載されていないという、今では珍しいところです。

この店がなぜ30年続いてきたかというと、出しているものに徹底的にこだわり、必要以上の利益を求めず、決して背伸びをしないという基本方針を貫き通したことにあります。

その姿勢はもっぱら「自らにおいて何をどのように提供できるか」というところにこだわったものであり、客を動かそうとする発想は存在しません。

 

そのように考えてみると小手先だけで他者を動かそうとすることよりも、より大切なことがあることに気づくのではないでしょうか。