投稿日:2016年10月26日

【札幌 弁護士コラム】よく見る契約書あれこれ①:類型別・契約書の急所

今日の午前中は破産管財人として債権者集会へ。

担当裁判官の方が修習の同期でびっくりしました。

一応覚えていてくれたみたいで何よりでした(汗)。

午後の訴訟では弁護士になって初めて認諾による終了を経験しました。

これはこれで意外と貴重な経験なのではないでしょうか。

 

さて、そんなこんなで最近はあまり契約書のことについて書いていないのでオムニバス形式のプチ連載をしてみたいと思います(全く無計画に書き始めております(笑)。)。

 

第1回目の今回は「類型別・契約書の急所」と題していくつかの契約書を挙げ、「ここだけは気を付けて!」という点を書いてみたいと思います。

 

①業務委託契約書:雇用契約とみなされないように!

このブログでも何度か書いていますが、実は世の中で一番弁護士のレビューを受けるべき契約書は業務委託契約書ではないかと考えています。

その大きな理由は雇用契約とみなされないための措置が甘いものが多いからです。

業務委託契約ではなく雇用契約とみなされると何が困るかというと、労働法上の規制がかけられるからです。

労働法上の規制がかかると契約が切れなくなったり、時間の制限がなされたり、最低の報酬が決められたりとかなり制約が多くなってしまいます。

ではどうやったら雇用契約とみなされないかというと一言では語り尽くせない部分がありますが、①指揮命令権を定めない、②業務時間を明確に決めない、③作業の道具や材料を請負人側で調達する、④請負人側に裁量権を認める等の要素があります。

このような対策が必要になってくるため、あまり適当な業務委託契約書を作っていると労働者の権利があるとして紛争になってしまうおそれがあります。

 

②賃貸借契約書:退去時の部屋の状況を想像して!

賃貸借契約書というと「前から使っているものでいいや。」とか「雛形でいいや。」とか思われがちですが、意外とそうでもありません。

賃貸借契約のなかで一番問題になりやすいのが原状回復です。

しかし、きちんと原状回復のことまで考えて作られた賃貸借契約書は多くありません。

原状回復については、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というもの出していて基本的には実務はこれに従った運用をされています。

このガイドラインでは、基本的なルールとして経年変化を含む通常損耗は貸主負担、それを超える故意・過失がある場合には借主負担ということを定めています。

しかし、これに反する特約が一切認められないかというとそうではありません。

特約が認められうることは最高裁の判例でも認められており、(絶対に有効とはいえませんが)この最高裁判例の考え方に従った形で特約を設ければ有効なものとして貸主に有利な契約を作ることも可能です。

そういった意味で賃貸借契約書も実はきちんと作りこまなければならないものであるといえます。

 

③消費貸借契約書:実はたくさんオプションがあるんです!

消費貸借契約書、というとピンとこない方も多いと思いますが、要するに借用書、つまりお金を貸し借りするときに作る契約書だと思ってください。

この消費貸借契約書を作るとき、いつ、いつまでに返すという約束で、いくらを貸したというところまでは多くの人が考えつくところですが、実はここから先が本当の消費貸借契約書の作り込みといえます。

というのも消費貸借契約書を作るということは貸したお金が返ってくるかどうか不安だということです。

確かに上記のような項目は必須のものであり、証拠として意味のあるものですが、債権を保全する(=とりっぱぐれをなくす)という消費貸借契約書の意味としてはそれだけでは足りません。

すなわち債務者に対して支払いを促す(≒強制する)ような仕組みを設ける必要があります。

例えば、連帯保証人のような人的担保を定めること、抵当権の設定のような物的担保を定めること、遅延損害金のように遅れると支払総額が大きくなることを定めること、公正証書にして遅れたら即座に強制執行ができるようにすることなど、仕組みの作り方は数多くあります。

 

以上のようなことはわりとすぐに対応できることだと思いますので、このような契約をする際には弁護士にちらっと意見を求めてみてはどうでしょうか。

 

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