投稿日:2016年10月17日

【札幌 弁護士コラム】紛争の坩堝?ボランタリー経済と貨幣経済の境目

今日は午前中に東京からのご来客がありました。

プライベートで札幌を訪問されているとのことですが、わざわざ足を運んで頂けてありがたい限りです。

その方ともお話しましたが、インターネット全盛の世の中になっても地域性というものはぬぐい切れないもので、移動することでしか得られない価値というものの確実に存在することを改めて感じました。

 

さて、本日のテーマはボランタリー経済と貨幣経済というおよそ法律家らしくないものです(笑)。

といっても経済のお話をガチガチするわけではありません。

 

まず、ボランタリー経済とは、精神の満足を目的として人々が行う経済活動をいいます。

つまり金銭的なもの以外を求めて人々が行動することで生まれる経済活動をいい、具体的には家事、育児、介護、地域活動などが挙げられます。

一方、貨幣経済とは、貨幣を媒介物として商品の交換が行われる経済の仕組みのことをいい、一般的に経済といって想起されるのはこのことをいいます。

 

弁護士業をやっていて、「この紛争の原因は何なんだろう。」と思うこともよくありますが、一つ抽象化していえるとすれば、「ボランタリー経済を前提として行ってきた行動が、突如貨幣経済によって評価されること」が挙げられます。

 

例えば、離婚事件の典型的な例であれば、夫がサラリーマンをしていて、妻が専業主婦をしている家庭において財産分与が問題となることがあります。

このとき、離婚問題が発生するまで妻は家事労働をやったことで夫に対して給与の支払いを求めたことはないでしょうし、家事の時給などというものは考えたこともなかったでしょう。

それが離婚に際して財産分与が問題となったとき、それまでに妻が家事労働をやってきたことが突然金銭評価されることになり、通常は夫がサラリーマンとして得た収入の半分が妻の寄与によるものと評価されます。

 

また、労働事件においても近いところがあります。

こちらで典型的なのは中小企業の従業員が退職後、過去2年にわたる未払賃金請求(残業代支払請求)を行うといった場合です。

もちろん在職中からサービス残業させられていることに不満を持ち、いつか残業代支払請求をしてやろうと考えている従業員もいますが、退職の原因が発生するまでは特に残業代の請求などするつもりがなかったとしても退職の原因の発生によって会社に不満を持ち、退職時においてボランタリーに行っていたサービス残業を金銭的に評価して、請求を行うようなことがあります。

 

このようにボランタリーな行動は時として突然に金銭的に評価されるようになり、一方でボランタリーに(無償で)評価されるべきと考える相手方との間で紛争に発展することがあります。

これを回避するためには、ボランタリーな行動をしている者は一定程度は金銭的評価がなされないことを理解しておくべきこと、請求されるべき相手方は、ボランタリーな行動が金銭的評価を受けることを意識しておき、それを何らかの形で少しずつ返還する心構えが必要ではないでしょうか。

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