投稿日:2016年10月07日

【札幌 弁護士コラム】知能と知性の違い

昨日は午後ずっとセミナーに出ていましたが、そのうちの1人の登壇者の中に田坂広志さんがいらっしゃいました。

ご存知の方にとっては目新しい話ではないことかと思いますが、「知能」と「知性」の違いのお話をされていました。

田坂さんによると、知能とは知識として物事に結論を導く能力であるのに対し、知性は物事を考え抜く能力であり、その違いは結論のない問いに対しての取り組み方にある、ということです(細部うろ覚えですみません。)。

そして知性を磨くためには「行」を行い、苦しいことでも貫き通すことが必要だというお話を頂きました。

 

このお話は一般論として聞いたのですが、弁護士業務においてもまさしく当てはまるお話だと感じました。

私(荒木)はよくお客様から「先生はよく話を聞いてくれるので話しやすい。」というような褒められ方(?)をするのですが、逆に他の弁護士はどのように聞き取りを行っているのだろうかと疑問に思ったりします(もちろんよく話を聞いてくれる弁護士もいるでしょうが。)。

おそらく商業的に見れば、相談者の話は半分程度で聞いておき、それまでの経験と勘(知能)で一応の対応をすればそれなりの書面ができ、仕事をやっている風にはなるでしょう。

しかし、それが本当の弁護士の仕事といえるのか、ということです。

 

一方で以前に労働法の大家である弁護士の安西先生のお話を聞いたことがあります。

安西先生は以前に担当した案件において、和解の進め方がまずく、無用な訴訟において会社も従業員も3年間にわたって縛ってしまったというお話をされていました。

その話は何十年も前の話だったはずですが、お話されている先生は昔を思い出して涙されていました。

それほどまでに会社と従業員の辛い思いを一身に受け止めて、案件に取り組んでこられたのでしょう。

それ以降、安西先生は自分の名刺の弁護士の「弁」の字を旧字体にされたそうです。

それは「辯」という字が「辛」い「辛」いことを「言」う仕事であると悟ったからだそうです(「辯」を分解するとこの3文字になります。)。

安西先生がされていた仕事はまさしく「行」であり、知性の涵養に通じるものだといえます。

 

弁護士が依頼者とどのように距離感を取るか、ということについては様々な意見がありますが、私は依頼者の想いを受け止めることが仕事であると思っています。

少なくとも依頼者との距離感を作ってしまったが故に失敗するよりも、依頼者との距離を近くしすぎたことによって苦しい思いをすることのほうが納得できるように思います。

そのように苦しい思いをすることは必ず知性を養う糧になることでしょう。

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