⑤秘密保持条項
業務委託を行う場合、多くは委託者のノウハウや顧客情報を受託者に開示し、受託者がそれを利用して業務を行うことになります。
このため、受託者が悪意をもってこのような情報を業務委託とは別のことに利用した場合には、受託者が委託者と競合する事業を行うことが容易にできてしまうことがあります。
このようなことを避けるため、秘密保持条項を設けて受託者が独自の事業に利用したり第三者に流出させたりすることを防ぐ必要があります。
秘密保持条項を設ける際は、「秘密情報」の定義をどう設定するかが重要になってきます。
もし「秘密情報」に含まれるべき範囲が不足していた場合には、ノウハウや顧客情報を利用されたとしてもそのような情報が「秘密情報」に含まれないことが起こり得、契約上では対応ができない場合が生じます。
また、秘密保持条項については業務委託契約が終了した後も存続するとする存続条項を別途設けておく必要があります。
⑥競業避止義務
秘密保持条項とともに受託者が独自の事業を行わないようにするために競業避止義務を定める条項を設けておく必要があります。
競業避止義務とは、他者が行うある事業と同一又は類似する事業を同じ商圏内で行ってはならないとする義務です。
この条項を定めることで受託者が独自に事業を行うことを防ぐことができます。
但し、受託者が自然人(個人)である場合、業務委託契約が終了した後、どの程度であれば競業避止義務を定めた条項を有効とできるかについては議論があるところです。
委託者としてはなるべく長い期間、広い範囲において競業を禁止したいという意向がありますが、一方で受託者には憲法上の職業選択の自由があります。
このためあまりにも長い期間、広い範囲において競業を禁止する条項は、憲法の趣旨に反するものとして無効となる場合があります。
具体的にどのような場合は有効でどのような場合が無効となるかについては、期間、業務範囲、場所的範囲、競業避止を定めることに対する対価の有無等、様々な要素を考慮して判断されることとなります。
(了)