投稿日:2020年11月16日

「意思表示」とは

定義

「意思表示」とは、一定の法律効果(法律で定められた権利や義務が発生したり消滅したりするという結果)の発生を欲する意思を外部に対して表示する行為のことをいいます。

要件と効果

意思表示が成立するには、
(1)内心的効果意思(一定の法律効果の発生を欲する意思、例:Aから絵画を買いたいと思うこと)
(2)表示意思(内心的効果意思を外部に表示しようとする意思、例:Aに絵画を買いたいと伝えようと思うこと)
(3)表示行為(外部に発表する行為、例:Aと面会して「絵画を買いたい」と伝えること)
上記の三つが必要とされています。
また、意思表示が、意欲された通りの効力を発生するためには、
(1)内容が確定できること
(2)実現可能であること
(3)違法でなく、公序良俗に反しないこと
(4)欠陥がないこと(内心的効果意思・表示意思・表示行為の内容が合致しており、内心的効果意思が成立する際に不当な干渉などがなかったこと)

関連条文

民法第93条~第98条

説明

「意思表示」とは、例えば、Aさんがある絵画を買いたいと思い、売主に対して「買いたい」と言う行為のことをいいます。
意思表示が有効に成立するためには、内心的効果意思・表示意思・表示行為の内容が一致していなければなりません。
もし、意思と表示した行為の内容が食い違っていた場合、その法律行為は無効又は取り消すことができるものとなります[意思の不存在(心裡留保、虚偽表示、錯誤)]。また、内心的効果意思が成立する際に不当な干渉などがあった場合、その法律行為は取り消すことができます[瑕疵ある意思表示(詐欺、強迫)]。「意思の不存在」や「瑕疵ある意思表示」については、別途詳しく記述します。

民法改正の影響の有無

民法改正により、意思表示に関する規定[心裡留保(民法第93条)、錯誤(民法第95条)、詐欺(民法第96条)、意思能力の効力発生時期等(民法第97条)、意思表示の受領能力(民法第98条の2)]が改正されました。詳しくは、各項目において別途記述します。

判例と学説

「表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が意思表示の無効を主張することは許されないとした事例」について、最判昭和40年9月10日民集第19巻6号1512頁等、関連する判例・学説が多数あり。

契約書を作成する上での注意点

契約実務において、意思表示の概念は非常に重要です。そもそも、契約書は契約当事者の意思表示を記録したものですが、契約書上に現れている意思と内心的効果意思にずれがあるような場合には、意思表示の規定に従って契約書の内容が無効になったり、取り消されてしまったりする可能性があります。また、契約書を締結する手続において、相手を脅したり、騙したりしたような場合にも契約書が効力を失うこともあります。このようなことから、意思表示に関する規定(民法第93条~第98条)は、十分に把握して契約書の作成を進める必要があります。