定義
「権利濫用」とは、権利の範囲を超えてその権利を行使することをいいます。
要件と効果
どのような場合に権利の濫用とされるのかは、具体的な場面に即して検討されます。
権利行使が加害の意思や目的をもってなされた場合には権利濫用の成立が認められやすいですが、権利濫用となるか否かの基準としては、権利行使によって生じる行使した者の利益とその相手方の利益や、その権利の社会的な意義や目的など様々な要素を比較衡量して決めるということになります。
また、それによって、権利濫用を行った者が逆に損害賠償を命じられたり、権利を失ったりすることもあります。
関連条文
民法第1条第3項
説明
「権利濫用」の規定とは、権利の濫用を禁止し、本来の目的を逸脱した権利の行使によって、相手方の不利益を被ることがないようにするためのものです。
たとえば、Aさんは甲土地の所有権を有しており、隣家に住むBさんに対する嫌がらせの目的で、自分にとっては何の利益もない高い塀を作ることによってBさんの家に日光が射さないようにした場合、外見上はAさんが自身の土地所有権をもとに塀を作っただけですが、正当な範囲を逸脱した権利の行使としてBさんに対して損害賠償義務を負うことがあります。
このように、いくら権利を有しているとはいえ、その権利をみだりに行使することは禁止されています。
民法改正の影響の有無
特にありません。
判例と学説
「借地期間満了を理由として、米軍に提供されている土地の返還を求めたが、退けられた事例」について、最判昭和40年3月9日民集19巻233頁。
契約書を作成する上での注意点
契約において、契約書の内容を明確にすることは重要なことですが、ただ契約書に記載してあるからといって、「権利濫用」が許されるわけではありません。あまりに自らの権利の極大化を図ったり、公平性を欠いたりするような契約内容については、権利濫用として無効となる可能性があります。また、契約の内容に基づいて認められた権利が存在したとしても、その行使方法が極端な場合にも権利濫用とされる可能性がありますので留意が必要です。