投稿日:2020年05月25日

「権利能力(自然人について)」とは

定義

「権利能力」とは、民法上、権利義務の主体となることができる地位あるいは資格のことをいいます。

要件と効果

権利義務の主体とは、人間(自然人)と法人のことです。自然人の権利能力に関し、民法では
(1) 自然人は生まれた時点で権利能力を有する
(2) 人種や性別などに関係なくすべての自然人は平等に権利能力を有する(権利能力平等の原則)
(3) 死亡によって権利能力は消滅する
とされています。
権利能力があれば、権利を有し、義務を負うことができます。

関連条文

民法第3条1項、第721条、第886条、第965条

説明

私たち自然人は出生の時点で権利能力を有し、死亡の時点で権利能力を失います。
では、何をもって「出生」とするのか。これについては、胎児が母体から露出している部分に関して、「一部露出説」と「全部露出説」の二つの説があり、民法上は後者の「全部露出説」が通説となっています。しかし、胎児に関する例外的扱いとして、不法行為による損害賠償、相続、遺贈については、胎児は「すでに生まれたものとみなす」とされており、胎児に例外的に権利能力を認めています。

このような規定が定められているのは、胎児が出生した時に不利益を受けないようにするためです。
よって、胎児が出生しなかった場合のことを考慮し、胎児に関する権利能力の認め方については、胎児の間は権利能力を認めず、出生した場合は胎児であった時にさかのぼって権利能力があったものとする「停止条件説」と、胎児である時にすでに権利能力を認めるが、生まれてこなかった場合ははじめから権利能力を有していなかったものとする「解除条件説」の、二つの考え方があります。

また、権利能力が消滅する時点については、死亡によるとされていますが、これを定める規定は
ありません。
近年は、何をもって「死亡」とするのかについての議論もなされていますが、「①呼吸の不可逆的停止②心臓の不可逆的停止③瞳孔の拡散」の3つがあったときとする三徴候説が一般的な死亡の判断基準とされています。
死亡したかどうか、いつ死亡したのかについては、相続関係において特に重要になります。

民法第32条の2では、事故等によって複数人が死亡した場合、死亡の前後が明らかでない場合はこれらの者は「同時に死亡したものと推定する」としています。

民法改正の影響の有無

ありません。

判例と学説

「停止条件説」と「解除条件説」について、大判昭和7年10月6日民集11巻2,023頁。

契約書を作成する上での注意点

人は、出生から死亡までの間において権利能力を有することから、契約書の当事者となれるのもこの間に限られます。生まれる前から何かしらの財産を引き継ぐような契約はできませんし(遺贈は別の制度です。)、死後に残された財産を亡くなった人を当事者とする契約を結んで移転させることもできません。
代理人を通じた契約をする場合で、重要な契約をするときには、当事者が生存しているかを確認するため現在戸籍の提出を求めるなどの対応も考えられます。