投稿日:2020年05月25日

「後見」とは

定義

「後見」とは、制限行為能力者(法的な判断能力が低いとみられる人)を法的に保護するための制度です。
(1)「未成年者に対して親権を行うものがないとき、又は親権を行うものが管理権を有しないとき」
(2)「後見開始の審判があったとき」
のいずれかの場合に開始します。
(1)の場合を「未成年後見」、(2)の場合を「成年後見」といいます。

要件と効果

後見が開始されるのは、
(1) 親権者がいない、あるいは親権者が財産管理権を持たない場合
(2) 「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にあり、「家庭裁判所による後見
開始の審判を受けた」場合
  のいずれかです。

  (1)及び(2)の場合のいずれでも、未成年後見人又は成年後見人(裁判所が未成年被後見人[(1)にあたる未成年者]又は成年被後見人[(2)にあたる者]のために法律行為を行う者として認めた者)の同意がない限り、未成年被後見人又は成年被後見人が行った行為は事後的に取り消すことが可能となります。
  「未成年後見」の場合、未成年後見人の同意を事前に得たうえで、未成年被後見人が行った法律行為は確定的に有効なものであり、取り消すことができません。

  一方、「成年後見」の場合、たとえ成年後見人の事前の同意を得ていたとしても、成年被後見人
が単独で行った法律行為は常に取り消すことが可能です。

関連条文

民法第5条、第7条、第8条、第9条、第10条、第838条から第875条

説明

「後見」に関する規定とは、法律行為を単独で確定的に行うことができない人(制限行為
能力者)を保護するための制度のうち、親権者がいない、あるいは親権者が財産管理権を持たない未成年者、あるいは「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にあり、「家庭裁判所による後見開始の審判を受けた」人を保護するための規定です。

「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」とは、例えば、認知症などによって常に自らの行為の意味を理解できない状態にある場合などを指します。後見の開始は家庭裁判所によって決定されます。

後見人は、原則として、被後見人の財産の管理、またその財産に関する法律行為について、被後見人の代理となることが定められています。しかし、成年被後見人の居住用不動産の処分、利益相反行為、後見監督人が存在する場合におけるその同意については一定の制限が設けられています。
前述したように、成年被後見人が単独で行った法律行為は、成年後見人の事前の同意に基づくものであっても常に取り消すことが可能です。

しかし、例外として、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」(食料品などの購入、光熱費の支払いなど)については取り消すことができません。

また、成年後見人、あるいは後見開始の審判が取り消された成年被後見人は、
成年被後見人が行った法律行為について、確定的に有効なものと認める(追認権を行使する)ことができます。

民法改正の影響の有無

民法改正による影響は特にありません。

判例と学説

「後見人と被後見人の利益相反行為」について、最判昭和45年5月22日民集24巻5号204頁。

契約書を作成する上での注意点

成年被後見人との単独の契約は、日常生活に関するものを除き、取り消される可能性があります。
もし、成年被後見人と契約を結んだ場合は、その契約を有効なものとするために、成年後見の「追認」(事後的な同意)を得る必要があります。
このようなリスクを避けるためには、成年被後見人と契約を結ぶ際は、その成年後見人と取引しなければなりません。

なお、重要な契約を結ぶ場合には、相手方の当事者が成年被後見人となっていないことの確認のため、「登記されていないことの証明書」の提出を求める場合もあります。

上記については、「法定後見制度」について解説しましたが、当事者間の任意の「任意後見契約」に基づく後見が発生する場合もありますので、項を改めて解説致します。