定義
「行為能力」とは、法律行為を単独で確定的に有効に行うことのできる法律上の地位あるいは
資格のことをいいます。
要件と効果
行為能力を有しない者(制限行為能力者)は、自らが行う法律行為について制限されています。
制限行為能力者とは、未成年者・成年被後見人・被保佐人・(同意権を有する補助人を付された)
被補助人のことをいいます。それぞれについては別途記載します。
制限行為能力者との間の法律行為は、制限行為能力者から取り消すことが可能です。
取り消された場合、その法律行為ははじめから無効であったものとされます。
これに対し、親権者や後見人等の同意等があった場合には、法律行為が有効なものとして確定します。
関連条文
民法第5条、第119条、第120条、第121条
説明
「行為能力」の制限についての規定は、未成年者や一部の高齢者など、自らの法律行為について正常な意思決定をすることができない者(意思無能力者)を保護するために、その者が単独で確実に有効とされる法律行為を行う能力を制限したものです。
制限行為能力者が単独で行った法律行為は取り消される可能性があります。
例えば、制限行為能力者である未成年者が親の同意なく自らの所有物を売却した場合、親はその売買契約を取り消すことができます。
「取消し」が行われた場合、その法律行為によって生じた事実関係をすべて、その法律行為が
行われる以前の状態に戻す義務があります(原状回復義務の発生)。
例えば、制限行為能力者から受け取った金銭を、制限行為能力者に返すような義務です。
制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、原状回復義務を負います。
民法改正の影響の有無
民法改正前は、代理人の行為能力について「代理人は、行為能力者であることを要しない」とだけ規定されていましたが、改正後は、制限行為能力者が原則として代理人になることができるということを前提として、「制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。…」(第102条)と明記されました。
すなわち、制限行為能力者が代理人となる場合に取消しが可能かどうかにつき、本人(契約の当事者)に行為能力があれば足りるため、代理人の行為能力の問題とならないことが明らかにされました。
契約書を作成する上での注意点
契約を結ぶうえで、相手に行為能力があるかどうかは非常に重要です。
万が一、相手が制限行為能力者であった場合は、その契約を取り消される可能性があります。
未成年者であるかどうかの確認は戸籍等を確認することによって可能です。
その他の成年被後見人・被保佐人・被補助人であるかどうかの確認については、制限行為能力者でないことについての「登記されていないことの証明書」の提出を求めることで確認が可能です。
但し、制限行為能力者とされていない場合であっても、意思能力に問題がある場合(成年後見開始の審判がなされていない場合であって、認知症等によって意思能力がないとき等)もあり、意思能力の確認については別途検証が必要になります。